両親の年齢差が周産期予後に与える影響(Hum Reprod. 2023)

母親の高齢化(35歳以上)と周産期転帰との関連は十分に立証されています。父親の高年齢化(40-45歳以上)と周産期転帰との関連との関連も示唆されていますが、夫婦の年齢は同じ世代であることが多く、年の離れた夫婦での周産期予後がどうなるのか中々ビッグデータがないのが実情です。
こちらを観察した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

両親の年齢差が大きいと、周産期予後に影響を与えそうです。

≪論文紹介≫

Victor T Yu, et al. Hum Reprod. 2023 Nov 15:dead236. doi: 10.1093/humrep/dead236.

患者背景を調整しながら母親年齢と父親年齢との差が周産期予後に影響を与えるかどうか多変量ロジスティック回帰モデルを用いて観察したレトロスペクティブコホート研究です。データは、2012年から2018年までの20,613,704件の出生について、National Vital Statistics Systemから集計しました。
両親の年齢差を4歳間隔に11クラスターに分類し、母親の年齢を7区分(20歳未満、20-24歳、25-29歳、30-34歳、35-39歳、40-44歳、45歳以上)で層別化し、周産期予後との関連を評価しました。評価項目は、低出生体重児(-2500g)、超低出生体重児(-1500g)、早産(37週未満)、早産(32週未満)、SGA、Apgarスコア、先天異常、染色体異常としました。
結果:
両親年齢差の増加は、どちらの方向であっても、母体年齢を調整した場合でも、先天異常以外のすべての評価対象とした周産期予後リスクと関連していました。母親年齢25~29歳を基準とすると9~12歳年下の父親(n=3,773)から出生した新生児、16歳以上の父親(n = 98,555)から出生した新生児は、周産期有害事象がそれぞれ増加しました(OR 1.27、95%CI、1.17~1.37)(OR 1.14、95%CI、1.12-1.16)

≪私見≫

年齢差が大きいカップルの周産期予後増加は男性パートナーが若年でも起こっています。なかなか同様の報告はありませんので動向を見ていきたいと思います。
今回の考察では、若い父親は、精子数、精液量、総精子数、運動率の異常(Homonnaiら、1980;Schwartzら、1983;Chenら、2008)を示すことが報告されています。ただし、若い父親は、恵まれていない家庭環境、社会経済的地位、教育到達度や違法薬物、喫煙、飲酒などの生活様式などが周産期予後に影響を与えている可能性も否定できないとしています。

文責:川井清考(院長)

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