COCバイオマーカーの現状(J Assist Reprod Genet. 2023)

卵丘細胞は卵子・胚の発育に重要です。卵丘細胞-卵母細胞複合体(cumulus-oocyte complex)のバイオマーカーを生殖医療成績の予測因子として使えないかという取り組みは複数実施されてきましたが、2023年現在臨床応用には至っていません。
臨床試験をまとめたシステマティックレビューをご紹介いたします。

≪ポイント≫

臨床応用されていませんが、卵丘細胞からの遺伝的バイオマーカーは、卵子の質(CAMK1D、PFKP、HAS2、VCAN、GDF-9、BMP-15、PTGS2)、胚の質(GREM1、PTGS2、HAS2)、および妊娠率(GDF9、BMP15、VCAN)と関連していました。

≪論文紹介≫

Gaelle Massoud, et al. J Assist Reprod Genet. 2023 Nov 10. doi: 10.1007/s10815-023-02984-9.

2022年11月まで、PubMed、Embase、Scopus、Web of Scienceを用いて包括的検索(英語のみ)を行いました。卵丘細胞に伴う遺伝的バイオマーカーを卵質、胚質、および受精率、着床率、妊娠率、生児獲得率を含む臨床転帰の3つを対象とした研究を基準としました。
結果:
条件を満たした446研究のうち42研究を対象としました。
19研究が、卵丘細胞の遺伝学的および生化学的バイオマーカーと卵質を評価していました。卵子の質は、カルシウムホメオスタシス(CAMK1D)、グルコース代謝(PFKP)、細胞外マトリックス(HAS2、VCAN)、TGF-βファミリー(GDF9、BMP15)、およびプロスタグランジン合成(PTGS2)をコードする遺伝子の卵丘細胞におけるmRNA発現増加と正の相関がありました。
19研究が、卵丘細胞の遺伝学的および生化学的バイオマーカーと胚質と評価していました。胚質は、細胞外マトリックス(HAS2)、プロスタグランジン合成(PTGS2)、ステロイド生成(GREM1)をコードする遺伝子の卵丘細胞におけるmRNA発現増加と正の相関、ホルモン受容体(AMHR2)をコードするmRNA発現低下と正の相関がありました。
22研究が卵丘細胞の遺伝学的および生化学的バイオマーカーと生殖医療結果と評価していました。細胞外マトリックスをコードする遺伝子(VCAN)およびTGF-βファミリー(GDF9、BMP15)の発現増加は、妊娠率と正の相関がありました。

≪私見≫

最近、さまざまな体外受精成績を改善するための検査が増加していきています。
着床前検査もそうですが、あくまでtime to pregnancyを早める検査であり、採卵あたりの生児獲得率を上昇させる術ではありません。ただし、卵子の質を示す卵丘細胞からの遺伝的バイオマーカーが商業的になっていければ、適正な卵巣刺激の探求が進む可能性もあります。変化に取り残されないように知識のアップデートをしていかなくてはと感じています。

文責:川井清考(院長)

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