新鮮胚移植でHCG追加投与は黄体サポートになる?(Reprod Biomed Online. 2023)

GnRHaトリガーでの内因性の黄体期血清プロゲステロン値はhCGトリガーより低くなることが懸念されますが、HCG追加投与が内因性の黄体期プロゲステロン値上昇に寄与するかどうか調査した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

新鮮胚移植においてHCG追加投与における黄体サポートは有効ですが、OHSS発症リスクが伴うことに注意が必要です。

≪論文報告≫

Louise Svenstrup, et al. Reprod Biomed Online. 2023. doi: 10.1016/j.rbmo.2023.103415

デンマークの生殖医療施設にて、無作為化対照3群間試験を実施しました。
12-25個の12mm以上の発育卵胞を認めた患者を無作為に割り付けました。
第1群:排卵トリガー:6500IU hCG、第2群:排卵トリガー:0.5mg GnRHa+採卵日: 1500IU hCG、第3群:排卵トリガー:0.5mg GnRHa+採卵日: 1000IU hCG+採卵5日後:500IU hCGとしました。全群に180mgの腟プロゲステロン製剤を投与しました。
結果:
69名の患者を対象とし、患者背景は同等でした。プロゲステロン値のピークは第1群と第2群では採卵4日後、第3群では採卵6日後でした。採卵6日後では、第2群のプロゲステロン値は他の群と比較して低くなりました(p=0.03)。採卵8日後では、第3群のプロゲステロン値は他の群に比較して高くなりました(p<0.001)。プロゲステロン値は、採卵後6-14日の期間は第1群、第2群と比較して第3群が高い状態を維持されました。ただし、第3群では4例がOHSSを発症しています。

≪私見≫

当報告は、HCG追加投与は黄体サポートになることを示した報告です。 面白かったのは、考察でも書かれてあるBMIと血清プロゲステロン値との間に負の相関があることが確認された点です。 BMI増加→分布容積増加→血清hCG値低下→血清プロゲステロン値低下という流れになります。裏付けの報告はたくさんあります。

  • BMI増加すると、卵胞液中および血清中のhCGレベルが低下
    (Salhaら 2001; Carrellら 2001; Dettiら 2007; Mizrachiら 2018)
  • BMI増加すると、hCGトリガーを増量しないと卵子成熟率が低下する懸念
    (レトロスペクティブ研究:Vinay Gunnala, et al. PLoS One. 2017)
  • hCG 6500 IUトリガー後24-36時間のhCG値とプロゲステロン値はBMIとの間に負の相関
    (前向き研究:Lan N Vuong, et al. Front Endocrinol (Lausanne). 2020)

文責:川井清考(院長)

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