国内反復着床不全・反復流産患者での着床前診断の効果は限定的(J Assist Reprod Genet. 2023)

国内では、国内反復着床不全・反復流産患者での着床前診断が臨床研究の一環として行われてきました。そのなかで大きなウェートをしめ行ってきたのが加藤レディースクリニックです。当該施設において、反復着床不全・反復流産患者での着床前診断が結果として累積生児につながったかどうか示した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

国内生殖医療施設の着床前診断を実施することによる治療期間あたりの累積生児獲得率の増加は反復着床不全および反復流産両症例において40-42歳の女性でのみ認めました。着床前診断は反復着床不全および反復流産の全症例において一定期間の累積生児獲得率を改善する治療法ではない可能性が示唆されました。当報告のデータは低刺激周期施設の場合のデータであることが限定的な解釈となります。

≪論文紹介≫

Keiichi Kato, et al. J Assist Reprod Genet. 2023 Sep 4. doi: 10.1007/s10815-023-02926-5.

着床前異数性検査(PGT-A)が、反復着床不全および反復流産患者における累積生児獲得率を増加させるかどうかを評価することを目的としました。
PGT-A実施の有無にかかわらず採卵7,668件のカルテをレビューしたレトロスペクティブコホート研究です。傾向スコアマッチングを用いて、PGT-A群の患者579名を非PGT-A(コントロール)群の患者7,089名と1対1でマッチさせました。周産期合併症・新生児転帰転帰と累積生児獲得率を統計学的に比較しました。
結果:
単一胚盤胞凍結融解胚移植1回あたりの生児獲得率は、PGT-A群では全年齢群で改善した(P < 0.0002)。周産期合併症・新生児転帰は、反復着床不全・反復流産共に差がありませんでした。Cox回帰分析では、反復着床不全群において、採卵あたりのリスク比はコントロール群よりもPGT-A群で低く(P = 0.0480)、特に40歳未満女性で低くなる傾向が強くなりました(P = 0.0364)。反復流産群ではPGT-A群とコントロール群で差を認めませんでした。治療期間あたりのリスク比は、40-42歳の女性においてのみ、反復着床不全および反復流産の両症例でPGT-A群で改善しました(P = 0.0234およびP = 0.0084)。

≪私見≫

治療期間あたりの累積生児獲得率は、1採卵で実施できる胚盤胞生検PGT実施件数に依存します。このデータは採卵個数が2.6-2.8個の場合の評価となります。調節卵巣刺激をおこなっていて多くの回収卵をとる施設では少し結果が異なる可能性がありますが、卵巣予備能が低下している患者にとってはどの施設でも同じような結果になるのではと個人的に思っています。

文責:川井清考(院長)

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