PCOS診断基準(2024)の内分泌異常基準値(J Obstet Gynaecol Res. 2023)

多嚢胞性卵巣症候群の診断基準(2007)は、①―③を満たす場合とされています。
①月経異常(月経周期25-38日から逸脱する場合)
②多嚢胞性卵巣 (両側卵巣で多数の小卵胞が見られ、少なくとも一方の卵巣で2~9mmの卵胞が10個以上ある場合)
③血中男性ホルモン高値 または LH基礎値高値かつ FSH基礎値正常

③に関しては注)で、「男性ホルモン高値はテストステロン、遊離テストステロンまたはアンドロステンジオンのいずれかを用い、各測定系の正常範囲上限を超えるものとする。LH高値の判定は、スパック―Sによる測定ではLH≧ 7mIU/ml(正常女性の平均値+ 1× 標準偏差)かつLH≧ FSHとし、肥満例(BMI≧ 25)ではLH≧ FSHのみでも可とする。他の測定系による測定値は、スパック―Sとの相違を考慮して判定する。」とされていて、違う測定系を用いている場合の基準値判断に迷うものでした。

PCOS診断基準(2024)では
「LH高値は、LH基礎値高値かつLH/FSH比高値で判定し(それぞれ正常女性の平均値+ 1×標準偏差以上)、肥満例(BMI≧25)ではLH/FSH比高値のみでも可とする。アーキテクトによる 測定の場合は LH≧7.1mIU/mL、 LH/FSH 比≧1.21、エクルーシスの場合は LH≧9.9mIU/ mL、LH/FSH 比≧1.51をカットオフ値の参考とする。」「アンドロゲン過剰症は、血中アンドロゲン高値またはアンドロゲン過剰症状で判定する。血中アンドロゲンの測定には総テストステロンを用い、測定系の基準範囲上限で判定 する。アンドロゲン過剰症状は男性型多毛を用い、 modified Ferriman-Gallweyスコア≧ 6を多毛有りとする。」とわかりやすい記載となっています。

今回のPCOS診断におけるLHおよびLH/ FSH比のカットオフ値について調査した元報告をご紹介いたします。

≪論文紹介≫

Rie Yanagihara, et al.  J Obstet Gynaecol Res. 2023 Jan;49(1):253-264.  doi: 10.1111/jog.15423.

コントロール群99名とPCOS群106名を登録しました。血清LH濃度とFSH濃度は電気化学発光免疫測定法(アーキテクト)と化学発光免疫測定法(エクルーシス)を用いて測定しました。測定値の分布を調べ、LH と LH/FSH 比の平均値+1 SD 値を算出した。カットオフ値は回帰式を用いて2つの測定系における候補値の中央値と一致させました。日本産科婦人科学会基準によるPCOSの内分泌学的異常率をLH分泌異常とテストステロン上昇で算出しました。
結果:
カットオフ値はアーキテクト LH 7.1(mIU/mL)、LH/FSH比 1.21、エクルーシス 9.9、LH/FSH比1.51 でした。PCOSにおける内分泌学的異常(LH上昇、LH/FSH比上昇、テストステロン上昇のいずれか)の検出率は、アーキテクトではBMI 25未満PCOS群(BMI 20.5±2.2) 72.2%、BMI 25以上PCOS群(BMI 31.3±6.0) 70.6%、エクルーシスではそれぞれ69.4%、73.5%でした。

≪私見≫

PCOSのPCOS診断基準改定(2024)のホルモン基準値は比較的クリアな項目、基準値に設定されてきそうです。ただし、測定系が異なると基準値が異なりますから、どの方法で測定したかなどにも注意する必要がありそうです。
今回のデータをみて思ったのはPCOSにおける内分泌学的異常のテストステロン異常が40%前後あり、個人的な印象よりアンドロゲン過剰症患者が多いのではないかという印象、コントロール群でもPCOSにおける内分泌学的異常がアーキテクト 21.2%、エクルーシス 19.2%いるので他の月経異常や多嚢胞卵巣との診断基準を含めて、しっかりPCOSの診断をつけることが大事なんだと感じています。

文責:川井清考(院長)

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