先天性凝固素因異常がある反復流産患者にヘパリン治療は無効(Lancet. 2023)

抗凝固療法は、凝固素因がある反復流産患者に使用されることが多いが、先天性凝固素因患者への低分子ヘパリンの有用性はエビデンスに乏しく、質の高い研究が望まれていました。8年以上の年月をかけて行われたランダム化比較試験をご紹介いたします。

≪ポイント≫

低分子ヘパリン治療は、先天性凝固素因異常がある反復流産患者の出産率を高めることがありませんでした。反復流産患者に先天性凝固素因異常があったからといって低分子ヘパリン治療を行うことを推奨しないこと、それ以前に、反復流産患者に先天性凝固素因検査を推奨しないことが今後のスタンダードになるかもしれません。

≪論文紹介≫

Siobhan Quenby, et al.  Lancet. 2023 Jul 1;402(10395):54-61. doi: 10.1016/S0140-6736(23)00693-1.
方法

ALIFE2試験は、英国(26施設)、オランダ(10施設)、米国(2施設)、ベルギー(1施設)、スロベニア(1施設)で実施された非盲検ランダム化比較試験です。18~42歳で、2回以上の流産既往があり、先天性凝固素因が確認された女性で挙児希望、妊娠初期(妊娠7週以下)を対象としました。尿中妊娠反応が陽性となった時点で、低用量低分子ヘパリンを使用する群と使用しない群に無作為に割り付けられました(1:1)。低用量低分子ヘパリンは妊娠7週以前から開始し、妊娠終了まで継続しました。主要評価項目は出生率としました。安全性評価項目は出血エピソード、血小板減少、皮膚反応などとしました。
結果:
2012年8月1日から2021年1月30日に、10,625名の女性が適格性を評価され、428名が登録され、326名が妊娠し、無作為に割り付けられました(164名:が低用量低分子ヘパリン群、162名が標準治療群)。低用量低分子ヘパリン群では162名中116名(72%)、標準治療群では158名中112名(71%)が生児獲得に至りました(aOR 1.08、95%CI  0.65~1.78; 絶対リスク差0.7%、95%CI -9.2%~10.6%)。低用量低分子ヘパリン群164名中39名(24%)、標準治療群162名中37名(23%)が有害事象を報告しました。

≪私見≫

先天性凝固素因検査は、第V因子ライデン変異、プロトロンビン遺伝子変異(G20210A)、アンチトロンビン欠損症、プロテインC欠損症、プロテインS欠損症としました。アンチトロンビン欠乏症、プロテインC欠乏症、プロテインS欠乏症は、妊娠中または産後6週間以外の時期に2回の検査を行い診断しています。
生児獲得率は先行しているALIFE試験やコホート試験と同様であることから、比較的臨床に即した信頼性のたかい報告であることが示唆されます。
Kaandorp SP, et al. N Engl J Med. 2010; 362: 1586-1596
Kolte AM, et al. Hum Reprod. 2021; 36: 1065-1073

文責:川井清考(院長)

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