睡眠時無呼吸は男性不妊の原因になる?

≪研究の紹介≫

台湾における閉塞性睡眠時無呼吸症候群と男性不妊症リスクとの関連について

Association of Obstructive Sleep Apnea With the Risk of Male Infertility in Taiwan.

Jhuang YH, et al. JAMA Netw Open. 2021 Jan 4;4(1):e2031846. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2020.31846. Erratum in: JAMA Netw Open. 2022 Jul 1;5(7):e2224322. PMID: 33475753; PMCID: PMC7821032.

はじめに
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は不妊症の危険因子とされていいます。30-60歳の男性の2-4%にOSAがあるとの報告もあります。そのリスク因子の代表は、肥満と、男性であることです。肥満による異常を加味してもOSAは性ホルモンの異常をきたすとされています。一方で、OSAの治療と性ホルモンの改善の可能性については相反する結果が出ています。しかし、現在までのところ、OSAと男性不妊症との関連は大きな集団では検討されていませんでした。

≪研究の要旨≫

この研究の目的は、男性不妊症におけるOSAの危険因子と、男性不妊症リスクに対するOSA治療の結果を調査することです。

この症例対照研究は、台湾のNational Health Insurance Research Databaseの一部であるLongitudinal Health Insurance Databaseからデータを抽出して行われました。2000年1月1日から2013年12月31日の間に不妊症と診断された男性が対象でした。年齢、性別、不妊症と診断された日を不妊症と診断されていない症例とマッチさせ解析しました。男性不妊症例と無作為に抽出された男性不妊でない症例(対照症例)を1:4としました(propensity score matchingを用いた)。

主要評価項目は、OSAの危険因子(睡眠ポリグラフ検査による診断)、副次的評価項目は、男性不妊症のリスクとOSAの罹患期間(短期、中期、長期)およびOSAの診療内容(なし、持続気道陽圧、口蓋垂口咽頭形成術、またはその両方)との関連です。

不妊症の男性患者4,607例(平均年齢34.2歳)と対照患者18,428例(平均年齢34.3歳)が解析されました。多変量ロジスティック回帰分析では、OSAは不妊症と関連する独立した危険因子でした(リスク:調整オッズ比、1.24;95%CI、1.10-1.64;P = 0.003)。絶対リスクは0.204(95%CI、0.092-0.391)でした。無治療群のOSA患者では、OSAのない患者と比較して、不妊症のリスク(調整オッズ比)は1.80(95%CI、1.56-2.07;P < 0.001)でした。一方、持続気道陽圧、口蓋垂口咽頭形成術、またはその両方にて治療した場合、オッズ比は0.98から0.99と、対照群と同等でした。OSAの罹患期間が1年未満ではオッズ比1.17、1年以上5年未満では1.26、5年以上では1.86と長期ほど悪化していました。

この研究の結果から、OSAが男性患者の不妊リスクを増加させ、そのリスクはOSAの罹患時間と関連しているという仮説を支持するものでした。さらに、OSAを管理・治療することが、不妊症リスクの低下につながっていました。

表 男性不妊症のリスクー解析結果の一部

男性不妊症
N(%)
対照群
N(%)
P値 調整オッズ比 P値
全症例 4,607 (20) 18,428 (80)      
OSA あり 4,461(96.8) 17,963 (97.5) 0.02 1.24 (1.10-1.64) 0.003
OSA なし 146 (3.2) 465 (2.5) 1 [Reference]

≪筆者の意見≫

閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、酸素の不足、過呼吸、睡眠の質の低下を引き起こすと考えられ、これらは心血管、代謝内分泌、認知機能の異常と関連しています。OSAやその他の睡眠障害は、酸化ストレス、インスリン抵抗性、全身性炎症、異常な生殖ホルモン分泌を増加させることにより、不妊症につながる可能性があるとされています。
今回の検討では、肥満や高血圧、糖尿病、脂質異常症、呼吸器疾患、腎機能障害といった主な併存疾患を考慮しても、閉塞性睡眠時無呼吸症候群が男性不妊症を引き起こす原因であるという結果でした。また、何らかの閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療を行うことによって、男性不妊症のリスクは低下していました。なので、可能ならばまず問診から閉塞性睡眠時無呼吸症候群について確認して疑っていくことが重要だと認識しました。やはりご夫婦一緒に受診していただき、女性パートナーに呼吸が止まっているかどうか必ず聴いてみることが必要です。

文責:小宮顕(泌尿器科部長)

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