アシステッドハッチング着床不全に有効?(Hum Reprod. 2023)

孵化補助(アシステッドハッチング)は、生児獲得率への有効性はランダム化比較試験やメタアナリシスでも有効性は示されていません。では、反復着床不全患者でも有効性がないのでしょうか。ランダム化比較試験をご紹介いたします。

≪ポイント≫

反復着床不全カップルでのアシステッドハッチングの有効性は認められませんでした。

≪論文紹介≫

Max H J M Curfs, et al. Hum Reprod. 2023 Aug 29;dead173.  doi: 10.1093/humrep/dead173. 

着床不全患者のアシステッドハッチングの有効性を検討するために設計された二重盲検多施設ランダム化比較試験です。アシステッドハッチング後の生児獲得率が10%増加することを証明するために各治療群に294組の参加者(合計588組の不妊症カップル)が必要でした。2012年11月から2017年11月に組み入れられ無作為化され、297名がアシステッドハッチング群に、295名がコントロール群に割り付けられました。
20名ずつのブロック無作為化が適用され、無作為化は参加者、治療担当医師、胚移植手順に関与する検査スタッフには秘密にされました。卵巣刺激、採卵方法、胚培養、移植方法、移植胚選択などはアシステッドハッチング群・コントロール群で同じとしました。
参加者は、少なくとも2回の連続した新鮮胚移植もしくは凍結融解胚移植を受け、妊娠に至らなかった患者を対象としました。オランダの5つの生殖医療施設で行われました。
結果:
新鮮胚とその後の凍結・融解胚の移植(該当する場合)を含む、開始周期あたりの累積生児出生率は、アシステッドハッチング群(n=297、25.9%)で77名、コントロール群(n=295、23.1%)で68名であり、有意差を認めませんでした(RR:1.125、95%CI:0.847~1.494、P = 0.416)。

≪私見≫

海外やコクランレビューでも肯定的な意見がありません。ただ、アシステッドハッチングのする時期、大きさなど統一化をはかることが難しく、マイナスにならないのであれば慣習的に行われているのが実際のところです。
イギリス(HFEA)はアシステッドハッチングの有効性が証明されていないため、追加費用なしで行うべきとしています。
米国生殖医学会(ASRM 2022)は、有効性に関するエビデンスが不十分であるため、アシステッドハッチングを推奨すべきではないとしています。
2021年のコクランレビューでも、利用可能なエビデンスの質はvery low-lowでバイアスリスクが高いと判断されています。アシステッドハッチングの有無で臨床妊娠率にほとんど差がない可能性が示されています(OR 1.07、95%CI 0.92~1.25;14のRCT、N = 2848;I² = 45%)。多胎のリスク上昇につながる可能性が示唆されていて、慎重に行うべきとしています。

文責:川井清考(院長)

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