着床前検査判定不能胚盤胞に再生検・検査は有用?(J Assist Reprod Genet. 2023)
胚盤胞の着床前検査をおこなったときに判定不能と帰ってくる割合は2~7%あるとされています。再生検・検査をすることは有用なのでしょうか。またリスクはあるのでしょうか。
≪ポイント≫
着床前検査判定不能胚盤胞に再生検・検査は実施を希望しても胚盤胞回復が悪く再生検できない可能性、再度判定不能となる可能性がありますが、74%で判定結果を評価することができます。再生検・検査胚は移植可能胚であったとしても一度の生検群と比べて、流産率の上昇、生児獲得率の低下を認めました。上記をふまえても、着床前検査判定不能胚盤胞のなかで移植可能・出産に至る胚があることから説明のうえ再実施を考慮することも十分意義がありそうです。
≪論文紹介≫
Mar Nohales, et al. J Assist Reprod Genet. 2023 Aug;40(8):1905-1913. doi: 10.1007/s10815-023-02875-z.
2016年1月から2021年12月に単一生殖医療施設にて体外受精時に着床前検査(PGT-A)を実施した18,028個の胚盤胞を対象に着床前検査判定不能群に再生検・検査は有用かどうかを調査したレトロスペクティブ研究です。判定不能であった517個胚のうち、400個は再生検・検査できました。そのうち71個の胚盤胞が移植可能でした。
結果
全体の診断率は97.1%であり、判定不能であった胚盤胞は517個でした。そのうち71個の胚盤胞が移植可能でした。生検日(day5 vs. day6)、ハッチングの有無、生検方法(Flicking vs. Pulling)が判定不能と関連し、ICM quality、TE quality、卵子年齢は関係しませんでした。
再生検した胚盤胞400個中384個で着床前診断に成功し、うち238個は移植可能胚でした。。再生検移植可能胚のうち71個が移植され、32例の臨床妊娠[臨床妊娠率 45.1%]、16例の流産[流産率 41%]が得られました。初回生検移植可能胚盤胞と比較して、再生検移植可能胚盤胞では低い生児獲得率、高い流産率を示しました。
≪私見≫
着床前検査判定不能胚盤胞に再生検・検査が有害だとする報告の方がやはり多そうですね。判定不能を減らす努力が必要なんだと思います。
- 有害
Neal SA, et al. J Assist Reprod Genet. 2019;36:2103–9.
Parriego M, et al. Gynecol Endocrinol. 2019;35:90–2.
Bradley CK, et al. Fertil Steril. 2017;108:999–1006. - rebiopsyは1回だが、2回のガラス化が有害
Li X, et al. Int J Gynaecol Obstet. 2022;160(3):806–13. - 影響は軽微
Cimadomo D, et al. Hum Reprod. 2018;33:1839–46.
ZhangS,et al. Fertil Steril. 2014;102:1641–5.
文責:川井清考(院長)
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