卵子提供での生児獲得率に影響を与える因子(Fertil Steril. 2022.)

ドナー卵子を用いた体外受精の国内での議論は、まだまだこれからです。
ただし、卵子が若い場合、どのような項目が生児獲得率に影響を与えるかは一般体外受精治療にいかせる知識です。ドナー卵子を用いて単一胚移植の生児獲得率出生率に影響を与える因子を調査した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

ドナー卵子を用いた場合の生児獲得率はレシピエント年齢、レシピエントBMI、移植胚ステージ、回収卵子数によって影響を受けることがSARTレジストリからわかりました。

≪論文紹介≫

Robert Stan Williams, et al.  Fertil Steril. 2022. Feb;117(2):339-348. doi: 10.1016/j.fertnstert.2021.10.006. 

「Commercial egg bank」「Program egg donor」でのドナー卵子を用いて単一胚移植の生児獲得率出生率に影響を与える因子を調査したレトロスペクティブ・コホート研究です。2016-2018年にSARTレジストリに報告されたドナー卵子を用いた体外受精40,485周期を対象とし、単一胚移植の生児獲得率・累積生児獲得率を評価項目としました。
結果:
19,128周期の初回単一胚移植の多変量解析の結果、「Commercial egg bank」「Program egg donor」を用いた単一胚移植の生児獲得率はそれぞれ53.3%、55.4%(OR 0.92)でした。 レシピエントの年齢が上がるにつれて生児獲得率は低下し、40-44歳(OR 0.80)、45-49歳(OR 0.77)、49歳以上(OR 0.65)となりました。そのほか、レシピエントBMI 25より増加するにつれて生児獲得率は低下し、25-29.9(OR 0.90)、30-34.9(OR 0.81)、35-39.9(OR 0.77)となりました。回収卵子16個未満に対して、16-22個(OR 1.11)、23-31個(OR 1.17)、32個以上(OR 1.19)と生児獲得率は増加しました。二個胚移植は生児獲得率を増加させましたが(単一胚移植 52%、二個胚移植 58%)、多胎も増加し、双胎43%、品胎0.9%となりました。胚盤胞移植は初期胚よりも生児獲得率が高くなりました(52.5% vs. 39.5%)。「Program egg donor」で治療を行った場合、IVFもICSIも生児獲得率に差を認めませんでした。

≪私見≫

卵子が若くても、やはり受け手側の女性年齢・BMIは生児獲得率に影響を与えそうですね。胚移植を行う場合は、母体の全身状態・子宮内膜状態はしっかり管理しておくことが重要だと感じます。

文責:川井清考(院長)

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