AMHでmicro-TESEの精子採取を予測!

≪研究の紹介≫

抗ミュラー管ホルモン値は特発性の非閉塞性無精子症における精子採取率を予測する-多施設横断研究の解析結果

Anti-Müllerian hormone predicts positive sperm retrieval in men with idiopathic non-obstructive azoospermia-findings from a multi-centric cross-sectional study.

Pozzi E, et al. Hum Reprod. 2023 Aug 1;38(8):1464-1472. PMID: 37322566.

非閉塞性無精子症では顕微鏡下精巣内精子採取術(micro-TESE)が我が国でも広く行われていますが、Y染色体微小欠失以外の精子採取予測マーカーとして確立されたものはありません。抗ミュラー管ホルモン(AMH)は精細管で精細胞を支持するセルトリ細胞から血液および精細管内部(精液中)に分泌されますが、思春期以降はその分泌が低下します。以前のブログ(クラインフェルター症候群におけるTESEでの精子採取率は、加齢とともに低下する?)でもAMHが精子採取を予測する因子として紹介しました。今回は、特発性(原因不明)の非閉塞性無精子症に対してmicro-TESEを行った場合の精子採取の予測因子としてのAMHの意義について解析した研究です。Human Reproductionという生殖医学のトップジャーナルに掲載されていましたので紹介いたします。

≪研究の要旨≫

すでに、AMHはARTの前にmicro-TESEを受けたiNOAの男性において、+SRと関連することが指摘されています。この研究は、micro-TESEを施行した特発性(原因不明)の非閉塞性無精子症(iNOA)の症例において、精子採取成功(+SR)を予測できる信頼できるマーカーを同定することを目的に行われました。

研究デザインや規模、研究期間としては、 3つの3次医療機関でmicro-TESEを受けたiNOAの117症例を対象に、多施設の横断的研究が実施されました。

対象と解析方法は以下のとおりでした。3つの施設で不妊症の原因として男性因子のみをもつ夫婦のうちiNOAの白人欧州人男性117人のデータを分析しました。micro-TESEで精子採取をできなかった症例(-SR)と+SRの症例を比較しました。micro-TESEでの+SRを予測するために多変量ロジスティック回帰モデルを用いました。

結果:
60症例(51.3%)で-SR(精子採取できず)、57症例(48.7%)で+SR(精子採取された)でした。+SRの症例は、基礎値のAMH値がより低く(P = 0.005)、エストラジオール(E2)レベルが高値でした(P = 0.01)。多変量ロジスティック回帰分析では、可能性のある交絡因子(年齢、平均精巣体積、FSH、E2など)を調整した後、AMHの低値(オッズ比:0.79、95%CI:0.64-0.93、P = 0.03)がmicro-TESEの+SRと関連していました(表)。AMH<4ng/mLを閾値とすると、micro-TESEでの+SRに対して最も高い精度をしめし、AUCは70.3%(95%CI:59.8-80.7)であり、AMH <4 ng/mLを閾値とすることが妥当と判断されました。

以下のような考察がなされていました。現在の所見から、iNOAの症例の2人に1人以上がmicro-TESEで-SRでした。全体として、AMHのレベルが低いiNOAでは、+SRとなった症例が多い結果でした。血清AMH値の閾値を4ng/mL未満とすることで、micro-TESEの+SRについての感度、特異度、陽性適中率を向上させるができました。ただし、より多くの症例を用いて、異なる研究機関や他の民族での外部の検証を行う必要があります。また、iNOA男性におけるAMHとSRの割合に関しては、高度なエビデンスとなるシステマティックレビューとメタアナリシスが不足しているのが現状であることも指摘されていました。

結論:
iNOAで術前の血清AMH値が低い男性では、micro-TESEで精子が得られる可能性(+SR)が高く、AMHの閾値を4ng/mL未満に設定すると予測精度が高くなりました。

表. 精子採取を予測する因子の多変量解析結果

変数 オッズ比 (95% CI) P値
年齢 1.06 (0.95–1.19) 0.4
精巣体積 1.09 (0.93–1.32) 0.3
AMH 0.79 (0.64–0.93) 0.03*
FSH 1.01 (0.95–1.07) 0.7
エストラジオール 1.04 (0.99–1.09) 0.1

 

≪筆者の意見≫

海外の研究なので、精子採取率は我が国の現状に比べてやはり高めです。AMHは卵巣予備能の直接的な指標とされ女性の患者ではよく測定されますが、男性患者については保険診療での対象ではありません。ただ、血液検査で簡便に測定できるので自費で測定しても良いかもしれません。AMHと造精機能については、我が国からも研究があり、Fujisawaら(2002)が、乏精子症と精液所見正常症例との比較で、精漿中のAMH濃度と造精機能は正の相関があったことを報告しています。また、クラインフェルター症候群でのconventional TESEでは、精子採取できた症例では血漿AMH濃度はより高値でした。今回の結果はこれらと逆の結果ですが、NOAといっても対象や術式が異なることが影響しているのかもしれません。特に今回の研究のAMHが平均3.4ng/mLであったのに比べて、クラインフェルター症候群の研究ではAMH値が平均0.85ng/mL#と非常に低値のため病態が異なると考えられます。したがいまして、患者背景ごとにAMHの意義を考慮する必要があるようです。

#血清AMH値のng/mLからpmol/Lへの換算式は次のものを使用しました; ng/mL×7.14=pmol/L.

文責:小宮顕(泌尿器科部長)

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