自然妊娠・体外受精妊娠では、妊娠中の不安は同程度?(Hum Reprod. 2023)

妊娠は、女性にとって精神的ストレスが増加する期間です(Philpott et al., 2019; Montagnoli et al., 2020)。では、体外受精妊娠ではどうでしょうか。過去のシステマティックレビュー(Capuzzi et al., 2020)では、一定の見解はえられてないとなっています。今回、ノルウェーで行われた前向きコホートをご紹介します。

≪ポイント≫

体外受精妊娠は自然妊娠の場合より、妊娠17週、30週において不安/抑うつが少なく、夫婦の関係満足度が高いことがわかりました。自然妊娠・体外受精妊娠両方経験している女性では、妊娠17週での不安/抑うつは体外受精妊娠の場合の方が高くなりましたが、この差は妊娠30週にはなくなりました。

≪論文紹介≫

Aurora Oftedal, et al. Hum Reprod. 2023 Jun 24;dead133.  doi: 10.1093/humrep/dead133.

ノルウェー母子コホート研究(Mother, Father and Child Cohort Study:MoBa)のデータを用いた前向きコホート研究です。MoBaコホートには111,143名の女性と76,594名の男性が含まれています。今回、調査に協力していただいたのは体外受精妊娠(女性 2,960名、男性 2,243名)、自然妊娠(女性 108,183名、男性 74,229名)でした。サブグループ解析対象として、2回妊娠し、1回は体外受精妊娠、1回は自然妊娠であるカップルとしました(286名:女性、211名:男性)。女性は、妊娠17週と妊娠30週に、不安/抑うつの複合症状、男性は各妊娠中の妊娠17週目に不安/抑うつの複合症状、双方に妊娠17週に関係満足度を調査しました。
結果:
女性、男性ともに、自然妊娠と比較して体外受精妊娠は不安/抑うつの複合スコアが低く、関係満足度が高いことがわかりました。ただ、体外受精妊娠と自然妊娠の両方を経験したサブグループでは、体外受精妊娠は、自然妊娠(M=1.15)と比較して、妊娠17週(M=1.19)における母親の不安/抑うつの増加と関連していました(平均差の95%CI 0.006, 0.074)。妊娠30週での不安/抑うつは同様でした。妊娠17週時点では男性も、不安/抑うつを同程度示していました。女性では、自然妊娠よりも体外受精妊娠の関係満足度が高くなりました。

≪私見≫

このコホート研究は1999年から2008年に実施されています。現在、体外受精妊娠が以前より一般的になってきていますので、結果はことなってきているかもしれません。どちらにせよ、不妊クリニックでは、妊娠初期で管理が終了し、周産期施設にバトンを渡すことが一般的ですので、体外受精妊娠された夫婦がどのような不安/抑うつをもって過ごされているのかを意識するよいきっかけになりました。

自然妊娠と比較して体外受精妊娠での夫婦関係満足度が高いことは、男性パートナーが子供をもつことに積極的であることや、共通の課題に対して意識共有があるからではないかという先行研究があります(McMahon et al.2013、Pasch and Sullivan, 2017)。
確かに、そのとおりかもしれません。

文責:川井清考(院長)

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