胚移植付近の低血清プロゲステロン値のレスキューは有効(Fertil Steril. 2023)

ホルモン補充周期凍結融解胚移植の移植日付近の血清プロゲステロン値は生殖医療成績に関係するという報告もあれば、関係しないという報告もあります。
最近の報告では、低血清プロゲステロン値で成績が下がるのであれば、分かった段階からレスキューできるかどうかの議論も始まっています。
2023年の胚移植付近の低血清プロゲステロン値のレスキュープロゲステロン投与は有効かどうかのメタアナリシスをご紹介いたします。

≪ポイント≫

胚移植付近の血清プロゲステロン値低値はレスキュープロゲステロン投与によって、適正血清プロゲステロン値の患者と同等の継続妊娠率、臨床妊娠率、流産率、生児獲得率が達成できることがわかりました。(2023年メタアナリシス)

≪論文紹介≫

Konstantinos Stavridis, et al. Fertil Steril. 2023 Jun;119(6):954-963. doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.02.007.

胚移植付近の血清プロゲステロン値が低い患者へのレスキュープロゲステロン投与が、血清プロゲステロン値低値に伴う有害事象を回避するかどうかを調査することを目的としたシステマティックレビュー・メタアナリシスです。
6つのデータベース(Embase、MEDLINE、APA PsycInfo、Global Health、HMIC Health Management Information Consortium、Google Scholar)および2つの追加ソースを、開始時から2022年8月29日まで検索しました。
レスキュープロゲステロン投与が生殖医療結果に与える影響を報告した前向きおよび後ろ向きコホート研究を対象としました。
レスキュープロゲステロン投与基準は胚移植付近の低血清プロゲステロン値10ng/mLをカットオフとし、評価項目として継続妊娠率、臨床妊娠率、流産率、生児獲得率としています。
結果:
7つの観察研究(2件トルコ、2件スペイン、2件フランス、1件中国)が解析に含まれ、5927人の患者(正常群:3441人、低値群:2486人、年齢中央値34歳)でした。レスキュープロゲステロン投与群と正常プロゲステロン値群の比較では、継続妊娠率、臨床妊娠率、流産率、生児獲得率に差はありませんでした。
 妊娠継続率 OR0.98(95% CI: 0.78, 1.24; P = .86, I2: 41%)
 流産率   OR0.98(95% CI: 0.81, 1.17; P = .80, I2: 0)
 臨床的妊娠 OR0.91(95%CI:0.78、1.06、P = .24、I2:33%)
 生児獲得率 OR0.92(95%CI:0.77、1.09、P = .33、I2:43%)

≪論文紹介≫

この論文のレスキュープロゲステロン投与の仕方は
 プロゲステロン皮下注射25mg/日 4件
 プロゲステロン経口内服30mg/日 1件
 プロゲステロン腟剤増量 1件
 プロゲステロン筋肉注射40mg/日 1件
となっています。

この報告でも、今後大規模RCTを組むべきとされていますが、ポイントは移植日付近の血清プロゲステロン値は生殖医療成績に関係するとしたら、妊娠継続のどのポイント(対峙、接着、浸潤、増殖)なのかが重要だと思います。
今いえるのは、ホルモン補充周期の胚移植日付近のプロゲステロン値は低くないに越したことがないということに尽きるんだと思います。

文責:川井清考(院長)

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