人工授精のHCG投与は前がいいの?同時がいいの?(論文紹介)

HCGトリガーと同時に実施された子宮内人工授精(IUI)(「HCG同時IUI」)は、HCGトリガーの32~36時間後に実施するIUI(「HCG後IUI」)と比較して、妊娠率を増加するのか?について、オランダの7つのクリニックで検討されました。166組のカップルが「HCG同時IUI」、208組が「HCG後IUI」にランダムに分類されています。原因不明または軽度から中等度の男性因子の不妊カップルが対象とし、女性の年齢が42歳以上、女性の体格指数が35kg/m2以上、両側卵管閉塞、重度の男性因子不妊患者は除外されています。卵巣刺激はゴナドトロピン製剤を実施しています。結果:最大4サイクル後の累積妊娠率は、「HCG同時IUI」の26.2%(43例)と「HCG後IUI」の33.7%(70例)でした。(RR 0.78 ,95%信頼区間 0.57-1.07)。「HCG同時IUI」の1周期あたりの妊娠率は、1回目、2回目、3回目、4回目のIUI周期で6.8%、10.5%、9.5%、7.4%であり、「HCG後IUI」では8.3%、16.4%、13.5%、9.0%でした。試験では、「HCG後IUI」が、「HCG同時IUI」と比較して妊娠率を増加させることは実証されませんでした。(グラフではHCG後IUI妊娠の方が高く見えていますが、統計的に優位でなかったということです。)
Reprod Biomed Online. 2019 DOI: 10.1016/j.rbmo.2019.03.208.

今までの論文ではHCG投与から0-36時間では人工授精の妊娠率は変わらないというのが一般的な認識事項です。この論文も同調する結果となっています。この論文は単一卵胞発育と複数卵胞での妊娠率も記載されていて「HCG同時IUI」単一卵胞7.6%、複数卵胞8.7%「HCG後IUI」単一卵胞10.2%、複数卵胞12.1%、多胎率も4%未満です。当院で一番実施数が多い単一卵胞「HCG同時IUI」の妊娠率も7-8%ですのですごくしっくりする成績なので少し事前HCG投与を増やしてみようかなと思っているところです。事前にHCGを投与するとなると受診回数が増えてしまいます。新型コロナウィルスの密を避ける状況下では受診回数を増やさないようにしながら妊娠率を増やす方法をwith cononavirus時代のニューノーマルとして検討する必要があると考えています。HCGを事前投与すると人工授精当日の排卵後の症例が増えますので成績に不安を感じないようこちらもデータを公表していきます。

文責:川井(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。