LHに反応する受容体はどの大きさの卵胞から発現するの?

ヒト顆粒膜細胞のLH受容体は月経周期において発現が変化します。 卵巣刺激において、どの時期からLH成分を付加するのが理想的なのか、FSHの漸増療法が卵胞発育数をレスキューするのかどうか詳細はわかっていません。卵胞のFSHR・LHR発現を調べた報告をご紹介させていただきます。

≪ポイント≫

LHR遺伝子は、ヒト顆粒膜細胞において直径5-6mmあたりから排卵まで発現しています。3-10mmの小胞状卵胞でも約80%がLHR遺伝子を発現しており対応する卵胞液中のエストラジオール、プロゲステロン、AMH、インヒビンBと強い正の相関を示すことから顆粒膜細胞でも機能していることがわかります。

≪論文紹介≫

Janni Vikkelsø Jeppesen, et al.  J Clin Endocrinol Metab. 2012 Aug;97(8):E1524-31.  doi: 10.1210/jc.2012-1427. 

直径 3~20 mm の正常なヒト卵胞の顆粒膜細胞および卵丘細胞における LHR 遺伝子発現を測定することを目的としました。がんのための妊孕性温存治療の卵巣組織から、不妊治療中の患者から顆粒膜細胞、卵丘細胞、卵胞液を採取しました。評価項目としてLHR、FSHR、アンドロゲン受容体(AR)、アロマターゼ(CYP19a1)、AMHR2の遺伝子発現をGAPDH遺伝子発現で調整し抗ミュラーホルモン、インヒビンB、ステロイドのFFレベルとの関連性を評価しました。
結果:
LHR発現は、排卵誘発前の卵胞の顆粒膜細胞で最大でした。150個の胞状卵胞(直径3-10mm)の大部分は、最大値の約10%のLHR発現を示し、LHR発現はFSHR、AR、CYP19a1、AMHR2およびFFのエストラジオールおよびプロゲステロンと有意な関連性を示しました。FSHR発現は、顆粒膜細胞の卵胞径が大きくなるに連れて低下し続けました。

  小卵胞
(6mm)
IVM卵胞
(9mm)
排卵前卵胞
(15mm)
排卵期卵胞
(19mm)
150 14 4 10
LHR(*1000) 1.3±0.2 1.1±0.6 12.8±3.7 2.8±1.1
FSHR(*1000) 138±12 29±16 26±12 0.5±0.005
CYP19a1(*1000) 67±13 43±13 1182±164 50±10
AR(*1000) 67±8 13±3 12±7 6±0.7

mRNA発現量(GAPDH遺伝子発現で補正後)

≪私見≫

受容体発現の観点からも前半はFSHに反応し後半はLHに反応することが想像されますね。症例によりますが、小卵胞でもLHRが発現しているものも見受けられ、早期よりLH成分を付加することが効果を示す可能性も否定できない結果なのかな?と感じています。

文責:川井清考(院長)

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