rFSH投与後の適切な血中FSH濃度はあるの?(レトロスペクティブコホート2013)

調節卵巣刺激を行ったときに発育卵胞が予想以上に少なくなることがあります。
こちらを卵巣刺激後の血清FSH濃度で予測できないか?という報告です。

≪ポイント≫

rFSH投与後の適切な血中FSH濃度が高すぎても、ロング法では回収卵子数、胚分割率、新鮮胚移植妊娠率に寄与しないことがわかりました。卵巣刺激を行う際には投与量と共にクリアランスもイメージしながら患者の卵巣反応をみていくことが必要だと感じています。

≪論文紹介≫

Yaakov Bentov, et al.  Reprod Biol Endocrinol. 2013 Feb 22;11:12.  doi: 10.1186/1477-7827-11-12.

rFSH(Gonal-F)のみでロング法を行った155周期を対象とし、月経周期7日目の血中FSH濃度と、回収卵子数、分割胚数、妊娠率との相関を検討したレトロスペクティブコホート研究です。トリガーはuHCG 10000単位で実施しています。
結果:
月経周期7日目の血中FSH濃度が22IU/Lを超えると、rFSH 1日投与量に関わらず、反応が悪くなり、妊娠率が低下することがわかりました。
平均年齢は35.8歳(21-45)、平均BMIは24.5(17 - 41)月経周期3日目 FSH濃度は6.5(2.4 - 20)IU/Lでした。37歳以上の高齢女性は44.5%でした。rFSHの1日平均投与量は250.3IU(200~300IU)でした。今回の研究ではロング法でダウンレギュレーションを行っているため月経周期3日目 FSH濃度ではほとんど差がありませんでしたが、25-30歳、30-35歳、35-40歳、40歳以上の月経周期7日目 FSH濃度FSHの血清濃度は、それぞれ11.35、10.23、4.96、13.88 IU/L-でしたが、統計的には年齢との関係は認めませんでした。

≪私見≫

この報告は新鮮胚移植のため妊娠成績にはあまり参考にならないかと思いますし、ロング法でおこなった研究のため、アンタゴニスト法の解釈とは若干異なってくると考えています。しかし、大事な点として卵巣刺激後の血中FSH濃度が増加すれば増加するだけ良いわけではないということがわかります。
その解釈も血清FSH濃度を理解する上で大事となってきます。FSH濃度を調整する因子としてFSH投与量とともにFSHのクリアランスも重要になってきます。顆粒膜細胞上のFSH受容体の発現が少ないとFSHが代謝されないため、血中FSH濃度が高く現れるという考え方になるようです。クリアランスには尿からの排出も影響しますから、このような行間をイメージしながら卵巣刺激方法を決定していくことが必要なのだなと改めて感じています。
FSHが循環からクリアランスされる過程の少なくとも一部には、FSHとその受容体の結合とホルモン受容体複合体の内在化が含まれます。したがって、顆粒膜細胞上のFSHレセプターを含む卵胞の数が少ないと、必然的にFSHとFSHRの結合が少なくなり、循環中にFSHが蓄積することになります。

文責:川井清考(院長)

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