COVID-19ワクチン接種後の月経の乱れ(コホート研究2023)

ワクチン接種が月経周期に影響を与えるメカニズムとして、急性期免疫/炎症反応、ホルモン変化、子宮内膜の免疫細胞などいくつかの仮説があります。COVID-19ワクチン接種後の月経周期の変化に関する先行研究では、ワクチン未接種者と比較して、ワクチン接種者は調整モデルで1-2日月経が遅れることが報告されています(①Edelman A.,et al. BMJ Medicine. 2022、② Wang S., et al. Am J Obstet Gynecol. 2022)。アメリカからワクチン後の月経周期の乱れを調査した報告が他にも出てきましたのでご紹介させていただきます。

≪ポイント≫

ワクチン接種を受けた女性の約25%が月経周期の一時的な変化を認めましたが、正常範疇をこえるものかどうかははっきりしません。二ヶ月以内には元に戻ることがおおく、ワクチン接種をためらうきっかけにはならないとしています。

≪論文紹介≫

Leslie V Farland, et al. Fertil Steril. 2023 Mar;119(3):392-400. doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.12.023.

アリゾナCOVID-19コホート(CoVHORT)研究に登録したSARS-CoV-2感染歴の有無を含めたボランティアサンプルを募集し、2021年にCOVID-19ワクチンを接種した生殖サブコホートに参加した女性545名を対象としました。患者背景などは自己申告により収集しました。主要評価項目として、COVID-19ワクチン接種後の月経周期に関する情報を2021年5月から12月にかけて収集しました。
結果:
ワクチン接種を受けたサンプルの大多数(58%)はファイザー社のワクチンを接種していました。患者背景では26~35歳(51%)、非ヒスパニック(84%)、白人(88%)が主な対象女性でした。ワクチン接種者の25%がワクチン接種後に月経周期に変化があったと報告し、1回目(18%)、3回目(14%)と比較して、2回目(56%)の接種後に変化があったと報告する人が多くなりました。変化として、月経不順(43%)、月経前症状(34%)、月経痛や痙攣の増加(30%)、不正性器出血もしくは過長月経(31%)でした。自己申告の知覚ストレスレベルが高い女性(OR, 2.22; 95% CI 1.12-4.37)、BMIが高いい女性(OR, 1.04; 95% CI 1.00-1.07) は、ワクチン接種後に月経周期の変化を申告する率が高くなっていました。新型コロナウィルス感染歴のある女性は、感染歴のない女性と比較して、ワクチン接種後に月経周期の変化を報告する確率が低くなりました(OR, 0.58; 95% CI 0.32-1.04).

≪私見≫

新型コロナワクチンは妊婦および妊活中女性には安全・有効であることが実証されていますので、あまり月経周期の乱れになるからとワクチン接種をためらう必要はありません。

文責:川井清考(院長)

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