視床下部性無月経にHOMA-Rとの関係がある?(論文紹介)

PCOS患者はインスリン抵抗性を認めHOMA-Rが上昇することはガイドラインにも書き込まれているほど周知の事実ですが、多嚢胞をみとめた視床下部性無月経がインスリン抵抗性をもつかどうかはわかっていません。
多嚢胞を認める原因不明視床下部性無月経女性では高BMI、低SHBGレベル、BMIとLHの正の相関と関連していることが報告されています。
これらのことから、多嚢胞の有無で視床下部性無月経女性のインスリン抵抗性を調べた報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

PCOSでなくとも多嚢胞を示す原因不明視床下部無月経女性にはインスリン抵抗性などの評価を行う必要があるかもしれません。

≪論文紹介≫

Daniel Mayrhofer, et al. Fertil Steril. 2022 Nov 8;S0015-0282(22)01446-7.  doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.09.029.

2020年1月から2022年3月に、原因不明視床下部性無月経女性で多嚢胞を認める20症例、認めない20症例を対象とした、オーストリアでのレトロスペクティブコホート研究です。
視床下部性無月経女性の定義として6カ月以上の続発性無月経であること、ホルムストローム療法無効であること、他の無月経の原因を除外されていることを原因不明視床下部性無月経の定義としました。
結果:
多嚢胞をみとめる原因不明視床下部性無月経女性では、テストステロン、AMH、HOMA-IR、遊離アンドロゲン指数が高くなりました(P<.05)。
また、多嚢胞をみとめる原因不明視床下部性無月経女性のみ、BMIとLHが正の相関、HOMA-RとBMIが正の相関、HOMA-RとSHBGが負の相関を認めました。

≪私見≫

体格がよくて、多嚢胞を確認するけれどPCOSでもなく無月経の患者は一定数います。多嚢胞を認めた続発性排卵障害の女性にはインスリン抵抗性を疑っていくのも一つの選択肢かと思います。

過去にもFunctional hypothalamic amenorrheaに対して、同様の報告が出てきていますので注視していきたいと思います。
S. Makolle, et al. Hum Reprod. 2021.
F. Chen, et al. Reprod Sci. 2021.
B. Wiweko, et al. BMC Res Notes. 2018.

文責:川井清考(院長)

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