卵子と精子の出会い(異常受精その①)

前回は卵子と精子の出会い(受精)について解説しました。今回は卵子と精子が出会うには出会えたが、残念ながら、間違った出会い方をしてしまった異常受精について解説します。

まずは見た目の変化、三段階(受精前→受精途中→異常受精)の解説から始めます。

受精前(1/3)では時計方向12時00分のところに1個だけ丸いポチがあります。
受精途中(2/3)では時計方向11時30分のところに2個目の丸いポチが出現します。
異常受精(3/3)では、更に、卵子の中に袋が3個出現します。このように卵子の中に遺伝情報の袋が3個見える状態(医師からは3PNとか3前核と言われると思います)は異常受精と呼ばれ、治療に使うことは出来ません。この異常受精になってしまう工程は主に2パターンありますが、今回はそのうちの1パターンを解説します。

次にイラストを使って卵子の中で起きている見た目には表れない中身の変化を解説します。

1/7:卵子は受精前の状態です(写真版1/3に相当)。この時、時計方向12時00分のところに1個だけある丸いポチの中には女性の遺伝情報が2個(♀♀)、卵子本体の中にも2個(♀♀)ある状態です。一方、卵子に向かってきている精子の頭の中には男性の遺伝情報が1個()入っています。
2/7:卵子の中に精子が2個同時に入ってしまいます。通常は1個の精子が卵子の中に入ると卵子は2個目以降の精子が入らないようにするのですが、稀に2個入ってしまいます。

2-3/7:精子の侵入を合図に、卵子の中にある2個の女性遺伝情報のうち1個()が外に放り出されます(写真版2/3に相当)。

4-5/7:次いで卵子の中に残った1個の女性遺伝情報()が袋の姿に形を変えて出現します。

6-7/7:次いで卵子の中に入った2個の精子の頭の中にある男性遺伝情報(♂♂)が袋の形に姿を変えて出現して、女性遺伝情報の入った袋にピッタリと寄り添って結果的に3個の袋が見える状態になります(♂♂)(写真版3/3に相当)。

今回解説した異常受精の発生過程は特に媒精(卵子に精子を振りかけて受精させる受精方法)に多く見られます。次回は主に顕微授精に見られる異常受精の発生過程を解説します。

文責:平岡謙一郎(培養室長)

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