人工授精の卵巣刺激別の妊娠率は年齢・卵巣予備能で変わる?(論文紹介)

クロミフェンもしくはレトロゾールを経口投与群、ゴナドトロピン注射群の人工授精の成績を女性年齢と卵巣予備能別に分けて示した報告をご紹介します。

≪ポイント≫

AMH 1.0ng/mLカットオフでは卵巣刺激人工授精の妊娠継続率には差がありません。

  AMH低値群 AMH正常群
妊娠継続率:35歳未満(CC/AI) 15.4% 14.9%
妊娠継続率:35歳未満(Gn) 12.1% 23.5%
妊娠継続率:35~40歳(CC/AI) 10.0% 11.0%
妊娠継続率:35~40歳(Gn) 12.5% 18.5%
妊娠継続率:40歳以上(CC/AI) 2.8% 3.3%
妊娠継続率:40歳以上(Gn) 3.0% 4.0%
多胎率(CC/AI) 13.1% 10.8%
多胎率(Gn) 18.7% 31.3%

≪論文紹介≫

Phillip A. Romanski, et al. Fertil Steril. 2022. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2022.09.010

2015年から2019年に卵巣刺激を行い、人工授精を施した患者を対象としたレトロスペクティブコホート研究です。AMH値が1.0ng/mL未満のAMH低値群と1.0ng/mL以上のAMH正常群で層別化しました。人工授精は妊娠成立するか3周期までを対象としました。女性年齢で層別化(35歳未満、35~40歳、40歳以上)し、評価項目の臨床妊娠率の成績を比較検討しました。
結果:
3,122人5,539周期はクロミフェンもしくはレトロゾールを経口投与し、1,060人1,630周期はゴナドトロピン注射を実施しました。クロミフェンもしくはレトロゾール群は周期あたりの妊娠継続率は、AMH低値群/正常群で同等でした(35歳未満:15.4% vs. 14.9%、35~40歳:10.0% vs. 11.0%、40歳以上:2.8% vs. 3.3%)。ゴナドトロピン注射では、35歳未満(12.1% vs. 23.5%, RR: 0.52, 95%CI: 0.28-0.97]) と 35-40歳 (12.5% vs. 18.5%, RR: 0.70, 95%CI: 0.49-0.99]) では、AMH低値群は正常群に比べて妊娠継続率が低くなりました40 歳以上では成績差ありませんでした(3.0% vs. 4.0%, RR: 0.86, 95%CI, 0.31-2.35)。多胎妊娠の割合は、ゴナドトロピン注射群でAMH正常群の場合のみ多胎リスクが上昇しました(18.6% vs. 31.1%)。

≪私見≫

多胎率が高いというのが印象です。3つ以上の排卵でも関係なく人工授精しているのでしょうね。ゴナドトロピン注射が若年女性で妊娠率が高いのは、このデータで見ると複数排卵が影響していることが想像できます。

文責:川井清考(院長)

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