受精卵の形態で生まれてくる胎児の大きさが変わる?(論文紹介)

患者様からの質問で、「胚質が悪いと生まれてくる胎児が赤ちゃんの大きさなどに影響がでますか?」と聞かれることがあります。「胚の形態評価は一パラメーターですので、着床・流産率に差がつく可能性がありますが、過去の報告から分割期胚・胚盤胞期胚共に胎児体重などに影響を与える可能性は少ないと思います。」とお伝えしています。今回、アメリカのSARTデータベースを用いたデータで同様の結果が報告されましたのでご紹介いたします。

≪ポイント≫

新鮮胚移植で単胎出産となる場合、出生生体重の減少やSGA児(週数と比べて小さい児)、LGA児(週数とくらべて大きい児)のリスクの増加と関連しません。

≪論文紹介≫

Mengmeng Li, et al. Fertil Steril. 2022 Oct;118(4):715-723. doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.06.017.

2008年から2013年のアメリカのSART CORSデータベースを用いたレトロスペクティブコホート研究です。自己卵子を用いた新鮮胚移植で生まれた単胎児を対象としています。評価項目は出生時体重、出生時体重のz-スコア、低出生体重児、SGA児、LGA児としました。
結果:
5,869周期のうち、71.1%が形態的に良好な胚を移植し、27.0%と1.9%がそれぞれ普通および不良の胚を移植していました。良好胚から出産した単胎児と比較して、不良胚から受精した単胎児は出生時体重が重くなっていました(3,415.8g ± 562.0g vs 3,202.7g ± 639.9g)。低出生体重児、SGA児、LGA児の割合は、胚の品質グループ間で同じでした。多変量回帰により、良好胚と普通胚の周産期成績を比較したところ、出生時体重、出生時体重zスコア、低出生体重児、SGA児、LGA児にも関連がありませんでした。分割期胚移植と胚盤胞期胚移植を別々に検討しても同様の結果でした。

≪私見≫

過去も同様に移植胚の質により出生体重が変わらないとされています。
G. Oron, W.Y. , et al. Hum Reprod, 29 (2014), pp. 1444-1451
Y. Sun, et al. Taiwan J Obstet Gynecol, 59 (2020), pp. 872-876
K.L. Hu, et al. Hum Reprod Open, 2021 (2021), Article hoab036
C. Bouillon, et al. Reprod Biomed Online, 35 (2017), pp. 197-207
J. Zhu, Y., et al. J Assist Reprod Genet, 31 (2014), pp. 1635-1641
J.B. Bakkensen, et al. J Assist Reprod Genet, 36 (2019), pp. 2315-2324
M. Li, et al. Arch Gynecol Obstet, 302 (2020), pp. 1511-1521

ただし、下記のような報告もありますので、胚をより良い環境で取り扱い、少しでもグレードが良い胚を準備することが必要なのかもしれません。

  • 培養液の違いにより出生体重が異なるという研究
    J.C. Dumoulin, et al. Hum Reprod, 25 (2010), pp. 605-612
    C.G. Vergouw, et al. Hum Reprod, 27 (2012), pp. 2619-2626
  • 周産期合併症(上:妊娠糖尿病、下:妊娠高血圧腎症)が胚質により異なるという研究
    T. Gasim. Oman Med J, 27 (2012), pp. 140-144
    A.K. Berhe, et al. BMC Pregnancy Childbirth, 20 (2019), p. 7

文責:川井清考(院長)

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