体外受精成績成功をにぎるタンパク摂取法は?(論文紹介)

体外受精成績と食事の関係は、わかっていないことが多くあります。
これまでの研究では、地中海式食事パターン、植物性たんぱく質、低血糖炭水化物、不飽和脂肪酸、葉酸と鉄分の摂取を推奨する食事パターンをより忠実に守ることが不妊症のリスクを低下させるとされてきました。タンパク質にだけフォーカスをあててみても、生殖医療において影響がありそうです。タンパク質は生物学的特徴、食品加工、調理方法の違いにより、栄養組成が大きく異なることがわかっています。男性では加工肉の摂取は精液の質の低下と関連し、魚類の摂取は精液の質の向上と関連しているとされています。女性では赤身肉や加工肉の摂取量が多いと成功率が低く、魚の摂取量が多いと成功率が高く、その他のたんぱく質が豊富な食品の摂取量は成功率に関係しない可能性が高いと考えられています。Environment and Reproductive Health(EARTH)研究に参加した女性を対象に、肉類およびその他のタンパク質の多い食品(卵、大豆由来製品、豆、ナッツ)の摂取量と不妊治療成績との関連性を評価した報告をご紹介いたします。
ブログの一番下に厚生労働省が作成した、魚でタンパク摂取するときの注意点も載せています。参考にしてください。

≪ポイント≫

タンパクを魚で摂取すると、体外受精治療の生児獲得率は上昇します。
魚を食べましょう。この論文のservingは厚生労働省の単位(●:水銀量)とほぼ同義です。厚生労働省ホームページで「厚生省 水銀」で調べるか、ブログ一番下のURLからご確認ください。」

≪論文紹介≫

Feiby L Nassan, et al.  Am J Clin Nutr. 2018 Nov 1;108(5):1104-1112.  doi: 10.1093/ajcn/nqy185.

Massachusetts General Hospital Fertility Center の前向きコホートに登録し、不妊治療のために 女性 351 名(体外受精周期598周期)を対象としました。食物頻度質問票により摂取量は評価しました。一般化線形混合モデルを用いて、タンパク質が豊富な食品(肉、卵、豆、ナッツ、大豆)の摂取量と、体外受精周期ごとの生児獲得率を検証しました。
結果:
魚・鶏肉・加工品・赤身肉を含む肉類の平均摂取量は1.2 servings/日であり、そのほとんどは鶏肉(35%)、魚(25%)、加工肉(22%)、赤身肉(17%)から摂取されていました。魚の摂取量は、生児獲得率と正の相関がありました。魚の摂取量の四分位が増加する女性における生児獲得の多変量調整確率は、それぞれ34.2%(95% CI:26.5%-42.9%)、38.4%(95% CI:30.3%-47.3%)、44.7%(95% CI:36.3%-53.4%)、および 47.7%(95% CI:38.3%-57.3%)でした(P=0.04)。魚摂取量を2 servings/週に増やすと生児獲得は、他の肉から置き換わった場合 OR 1.54(95%CI:1.14-2.07)、他のタンパク質の多い食品から置き換わった場合OR 1.50(95%CI:1.13、1.98)、加工肉から置き換わった場合OR 1.64(95%CI:1.14、2.35)と上昇することがわかりました。

≪私見≫

魚介類および長鎖ω-3脂肪酸(特にエイコサペンタエン酸)の摂取が生殖能力を改善する可能性を示唆されています。他の報告でも、魚の摂取が胚盤胞形成の増加と関連していることが示されています(Braga DP ,et al. Reprod Biomed Online. 2015;31(1):30–8.)。しかし、魚油サプリメントの使用は生児と関係がなかったことから、複数のメカニズムが作用している可能性が考えられます。
妊娠中または妊娠の可能性のある女性に魚摂取を勧める場合の懸念材料は、水銀、有機塩素、ダイオキシン、ポリ塩化ビフェニルなどの環境汚染物質を同時に摂取するリスクです。アメリカでは胎児がメチル水銀に暴露するのを制限する目的で、妊娠中または妊娠の可能性がある女性は魚介類を3servings/週に制限することを推奨しています。
上記を踏まえて魚中心のタンパク摂取を心がけ過剰摂取をさせていただくというのが現在のところのおすすめかなと考えています。
~関連ブログ~
妊娠している女性の魚介類摂取について(厚生労働省のパンフレット)

文責:川井清考(院長)

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