乳がんサバイバーの妊娠への影響(論文紹介)
乳がんサバイバーの治療後の妊娠は、生殖医療結果や母体の安全性の面で有害な影響を及ぼす可能性があります。乳がんサバイバーの妊娠に対する生殖医療結果や母体の安全面を検討したシステマティックレビュー&メタアナリシスです。
≪ポイント≫
乳がんサバイバーは一般女性と比較して、その後の妊娠の可能性が低下していました。帝王切開、低出生体重児、早産、SGA児リスクが、特に化学療法既往の乳がんサバイバーにおいて増加しました。
≪論文紹介≫
Matteo Lambertini, et al. J Clin Oncol. 2021. DOI: 10.1200/JCO.21.00535
検索条件と一致した6,462件の報告のうち、39件の報告(一般女性8,093,401人と乳がん患者112,840人の7,505人妊娠)を対象としました。乳がんサバイバーは一般女性と比較して、その後の妊娠の可能性が低下していました(相対リスク、0.40;95%CI、0.32~0.49)。帝王切開(OR、1.14;95%CI、1.04~1.25)、低出生体重児(OR、1.50;95%CI、1.31~1.73)、早産(OR、1.45;95%CI、1.11~1.88)、SGA児(OR、1.16; 95% CI, 1.01 〜1.33)のリスクは、一般女性と比較して、化学療法既往の乳がんサバイバーにおいて増加しました。先天性異常やその他の周産期合併症リスクは変わりませんでした。その後、妊娠しなかった乳がんサバイバーと比較して、妊娠した乳がんサバイバーは無病生存率(HR、0.66;95%CI、0.49~0.89)および全生存率(HR、0.56;95%CI、0.45~0.68)において良好でした。同様の結果は、患者背景、腫瘍種類、治療の特徴、妊娠の結果、および妊娠の時期に関係なく観察されました。
≪私見≫
論文に記載されている他の癌サバイバーの妊娠の可能性は下図のように報告されています。アップデートされて情報提供をしていきたいと思います。
癌診断後妊娠に影響を与える割合
診断 | RR (95% CI) |
---|---|
子宮頸がん | 0.33 (0.31 to 0.35) |
乳がん | 0.40 (0.32 to 0.49) |
白血病 | 0.40 (0.27 to 0.58) |
腎臓がん | 0.42 (0.18 to 0.99) |
脳腫瘍 | 0.52 (0.39 to 0.69) |
骨腫瘍 | 0.56 (0.37 to 0.86) |
卵巣腫瘍 | 0.56 (0.48 to 0.65) |
ホジキンリンパ腫 | 0.62 (0.47 to 0.82) |
全てのがん | 0.65 (0.55 to 0.77) |
肝がん | 0.65 (0.19 to 2.26) |
非ホジキンリンパ腫 | 0.66 (0.53 to 0.82) |
大腸癌 | 0.70 (0.41 to 1.17) |
甲状腺癌 | 0.82 (0.65 to 1.03) |
皮膚癌 | 0.97 (0.87 to 1.09) |
文責:川井清考(院長)
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