排卵周期凍結融解胚移植に黄体補充は有効?(論文紹介)

排卵周期凍結融解胚移植は、自身の卵巣からプロゲステロンが分泌されるわけなので薬での黄体サポートが生殖医療成績にどのように影響するかどうか詳細はわかっていません。現在までのシステマティックレビューとメタアナリシスをご紹介します。

≪ポイント≫

排卵周期凍結融解胚移植での黄体サポートとしてのプロゲステロン投与は、臨床妊娠率・出生率の向上に有効である。

≪論文紹介≫

Yossi Mizrachi, et al. Hum Reprod Update. 2021.DOI: 10.1093/humupd/dmab011

2000年1月から2020年12月まで、Medline/PubMed、Embase、Cochrane Libraryに掲載された文献の系統的検索(英語の査読付き原著論文)を行いました。
結果:
416件文献がマッチし、スクリーニングの結果、8件の研究がシステマティックレビューに、7件の研究がメタアナリシスに利用しました。黄体サポートに2研究(n = 858)がhCG投与を、6研究(n = 1507)がプロゲステロン投与を行なっていました。
4研究はRCTであり、残り4つは後方視的研究でした。ランダム効果モデルを用いたメタアナリシスでは、黄体サポートとしてのhCG投与は臨床妊娠率を増加させませんでした(2研究、OR 0.85、95%CI 0.64-1.14)。一方、プロゲステロン投与は高い臨床妊娠率(5研究、OR 1.48、95%CI 1.14-1.94)、高い出生率(3研究、OR 1.67、95%CI 1.19-2.36)となりました。

利用可能な証拠は、LPSのためのプロゲステロン投与がNC-FET後に有益であることを示す。これらの症例における LPS のための hCG 投与を支持するエビデンスはない。エビデンスの質を向上させ、我々の知見を検証するために、追加の大規模RCTが必要です。

≪私見≫

排卵周期凍結融解胚移植での黄体サポートとしてのプロゲステロン投与は、臨床妊娠率・出生率の向上に有効そうですね。
成績を向上させる理由として報告者らは2つの理由をあげています。
一つめの理由は黄体機能不全症例の存在です。黄体機能不全は、着床不全と早期流産の両方に関連しているとされています(Daya,et al. 2009)。黄体機能不全は排卵周期の5%程度にみられるとされていますし、女性年齢とともに上昇するといわれています。二つめの理由は着床の窓の問題です。サージから、トリガー投与から排卵までの時間、プロゲステロン上昇までの時間には個人差があり、胚移植時に着床の窓がずれている可能性があります。これら二つの問題を黄体サポートにより改善できるのだと思います。
hCG投与による黄体サポートが良好な結果にならなかったのは、やはりその周期の黄体賦活化させるための方法なので、良好な黄体でなければ機能不全が改善できないのではないでしょうか。今後の大規模なRCTに期待ですね。

文責:川井清考(院長)

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