卵胞サイズごとは採卵後の生殖成績に影響する?(論文紹介)

卵巣刺激を行うと、発育卵胞にサイズ差が発生します。どの卵胞にあわせて採卵日を決めるか迷うことが多々あります。
今回の論文は、採卵時の卵胞サイズごとに採卵後の成績を分類した報告です。

≪ポイント≫

  • 小さめの卵胞では、採卵時の卵胞サイズが大きくなるにつれて、卵胞穿刺あたりの良好胚盤胞率が増加し直径19mmでピークに達します。
  • 卵胞穿刺あたりの良好胚盤胞率が最も高いのは、19-24.5mmの卵胞(0.175-0.189)、25mm以上の卵胞(0.159-0.160)でも良好胚盤胞率は安定していました。
  • 9.5 mm以下の小さい卵胞の穿刺はほとんど意味がなく、卵胞穿刺あたりの良好胚盤胞率は約2%でした。

≪論文紹介≫

Bruce S Shapiro, et al. Fertil Steril. 2022. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2022.02.017
157症例の採卵時の卵胞直径ごとに卵胞あたりの回収率、胚発生率などを検討しました。女性年齢 33.5 ± 6.1歳、BMI 24.7 ± 4.9、AMH 4.6 ± 4.8ng/mL、FSHアンタゴニスト法にてhCG/GnRHaにてトリガー、34-35時間後に採卵を実施しています。回収卵子が15.0 ± 9.0個、成熟卵子数が11.3 ± 7.3個での採卵での成績となります。培養液はsingle step mediumで集団培養しています。卵胞径により8群に分類しました(≦9.5、10~12.5、13~15.5、16~18.5、19~21.5、22~24.5、25~27.5、28mm以上)。
結果:
157症例4,539個の卵胞穿刺、2,348個回収卵子、1,772個成熟卵子、1,258個正常受精、571個良質胚盤胞が得られました。穿刺した卵胞あたりの良質の胚盤胞の割合は、2.2%(≦9.5mm)、6.2%(10-12.5mm)、11.9%(13-15.5mm)、14.5%(16-18.5mm)、18.9%(19-21.5mm)、 17.5%( 22 - 24.5mm )、 15.9 %( 25 - 27.5mm )、 16.0 % ( 28 mm 以上)でした。
全体平均と比較すると、12.5mm以下の卵胞穿刺は良質胚盤胞率が劣り、直径19~24.5mmの卵胞穿刺は良質胚盤胞率が良好でした。その他の群では差は認められませんでした。卵胞径と胚盤胞の着床前診断の正常核型率は関係がありませんでした。

表1:穿刺卵胞サイズあたりの胚盤胞生検あたりの正常核型割合

表2:穿刺卵胞サイズあたりの生殖医療成績

≪私見≫

小卵胞でもよい胚がとれると聞きましたと患者様から質問を受けることがあります。卵巣刺激をして大きなサイズと小さいサイズが混在する小卵胞穿刺の成績と卵巣刺激をほとんどせずに小さいサイズを穿刺するのとは異なります。また年齢によっても適切な卵胞サイズは異なると思います。BMI 25のカットオフでは成績には差がありませんでした。
ただ、今まで、卵巣刺激を実施した際の小卵胞成績を示す報告があるようでありませんでした。この成績をみると採卵日を迷ったら、ちゃんと管理した状態なら後ろに伸ばしたほうがよいという成績のように感じてしまいます。高齢女性での成績を期待したいところです。
この論文は本当に素晴らしいですね。
臨床医でも医療に貢献するとは、このような論文を指すのだと思います。

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

亀田IVFクリニック幕張