日本人女性によるMTHFR遺伝子型別のマルチビタミンの有用性(論文紹介)

メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)には様々な遺伝子多型があり、神経管欠損症リスクに対する妊娠期葉酸補給の効果は遺伝子型によって異なることがわかってきています。4,517人の日本人のMTHFR遺伝子型に関する以前の研究では、C677T多型 CC型、CT型、TT型がそれぞれ39.0%、45.6%、15.4%で観察されていて、CC型、CT型では葉酸摂取が多く必要であることがわかっています。
MTHFR遺伝子多型の違いによる葉酸不足と高ホモシステイン血症に対するマルチビタミンサプリメントの効果を分析した報告をご紹介します。

≪ポイント≫

  • MTHFR遺伝子型に関係なく、マルチビタミンサプリメントは葉酸とホモシステインレベルをコントロールすることができます。
  • 妊娠の1ヶ月以上前に葉酸とホモシステインレベルの検査が有効かもしれません。

≪論文紹介≫

Keiji Kuroda, et al. Nutrients. 2021. DOI: 10.3390/nu13041381

205人の女性のうち、72人(35.1%)、100人(48.8%)、33人(16.1%)がそれぞれMTHFR遺伝子C677T多型 CC型、CT型、TT型を有していた。ホモ接合型変異体TT型の女性の血清葉酸値とホモシステイン値は、CC型とCT型の女性に比べて、それぞれ有意に低値(葉酸値:7.0 ng/mL未満)、高値(ホモシステイン値:13.5 nmol/mL以上)でした。神経管欠損症のリスクを有する女性54人(26.3%)において、葉酸とビタミンDを含むマルチビタミンサプリメントの1カ月間摂取は、MTHFR遺伝子型にかかわらず、すべての女性で神経管欠損症のリスクを軽減するために、葉酸レベルを増加させ(5.8 ± 0.9 から 19.2 ± 4.0 ng/mL, p < 0.0001) ホモシステインレベルを低下させました(8.2 ± 3.1 から 5.8± 0.8 nmol/mL, p < 0.0001) 。

≪私見≫

この報告で介入に使用されているマルチビタミン剤(Elevit®)は葉酸800μg、ビタミンB1 1.3mg、ビタミンB2 1.5mg、ナイアシン12mg、ビタミンB6 1.4mg、ビタミンB12 2.8μg 、5. 0mg、パントテン酸50μg、ビタミンC100mg、β-カロテン7200μg、ビタミンD7.0μg、ビタミンE6.5mg、カルシウム125mg、マグネシウム100mg、鉄21.5mg、亜鉛7.5mg、銅0.9mg、マンガン1.0mgを含有しています。
国内のガイドラインでは葉酸400μg/日を推奨していますが、米国では葉酸400-800μg/日を推奨しています。MTHFR遺伝子C677T多型 CC型、CT型が多い日本だからこそ、葉酸を少し多めに摂取してもよいのかもしれません。

文責:川井清考(院長)

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