妊活カップルの妊娠予測は可能?(論文紹介)

これまでの研究では、主に不妊症の個々の危険因子を特定することに焦点が当てられてきました。女性年齢、女性BMI、男性BMI、アルコール消費、睡眠の質、喫煙、食事、うつ状態、ストレス、大気汚染、内分泌撹乱化学物質などなどです。
予測モデルも開発されてきましたが、AUCが高いモデルがないのが実情でした。
北米の妊娠前コホート研究の女性参加者から収集したデータ(PRESTO)を活用し、AUC 約70%の妊娠予測モデルが確立できたという報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

妊活カップルの妊娠予測変数は、女性年齢、女性BMI、男性年齢、男性BMI、不妊既往、授乳既往、マルチビタミンまたは葉酸の使用、妊活のための生活習慣改善(基礎体温、排卵チェックまたは頸管粘液検査、妊娠可能時期での夫婦生活)、男性喫煙、女性学歴でした。妊活経験のない女性では最も重要な予測因子は、女性年齢、女性BMI、男性BMI、妊活アプリの使用、ストレス自覚でした。

≪論文紹介≫

Jennifer J Yland, et al. Hum Reprod. 2022. DOI: 10.1093/humrep/deab280

2013~2019年に21~45歳、米国またはカナダ在住で登録時に不妊治療を行っていないけれど、これから妊活を積極的に試みる4,133人の女性を対象としました。
登録時にベースライン質問票を記入し、最長12カ月間または妊娠するまで2カ月ごとに追跡質問票を記入しました。
ベースラインのアンケートで、参加者は社会人口学的因子、ライフスタイルと行動因子、食事の質、病歴、男性パートナーの特性に関するデータを報告し、合計163の予測因子が検討しました。さまざまな方法で妊娠確率の予測モデルを導きました。(i)妊娠試行時期から12ヶ月月経周期未満の妊娠予測(モデルI)、(ii)妊娠試行時期から6ヶ月経周期未満の妊娠予測(モデルII)、追跡期間12周期までの各月経周期内の妊娠予測(モデルIII)を検討しました。
結果:
Parsimoniousモデルでは、モデルIとIIのAUCは70%と66%であり、モデルIIIのconcordance indexは63%でした。全てのモデルで妊娠と正の相関を示した予測因子は、過去に乳児に母乳を与えたことがあること、マルチビタミンまたは葉酸サプリメントを使用していることでした。すべてのモデルで妊娠と負の相関していた予測因子は、女性年齢、女性BMI、不妊症の既往でした。妊活を今後はじめる女性の最も重要な予測因子は、女性年齢、女性BMI、男性BMI、妊活アプリの使用、研究参加時の試行回数、ストレスの自覚でした。

≪私見≫

妊娠率を上げるために注意することがわかりますね。
妊活アプリ使用、マルチビタミンや葉酸サプリメントの使用、妊活のための予備知識をつけること、適正なBMIを保つこと、食生活の改善、ストレスの軽減。
個人個人の取り組みも大事ですが、行政や専門家が啓発そして取り組みやすい環境を作ることが大事だと思います。

文責:川井清考(院長)

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