high responderにレコベル®皮下注ペンの投与方法の有効性は?(論文紹介)
卵巣過剰刺激症候群になるリスクが高いhigh responder患者にAMHと体重で投与用量を決定するレコベル®皮下注ペンを使うとゴナールエフ皮下注ペン150単位を用いたGnRHアンタゴニスト法と比較して有効性と安全性がどうかを比較した報告をご紹介します。
≪論文紹介≫
Hana Višnová, et al. Reprod Biomed Online. 2021. DOI: 10.1016/j.rbmo.2021.08.024
AMH 35pmol/l(4.90ng/ml)以上のhigh responderと考えられる153人(フォリトロピンデルタ個別用量群 78名、フォリトロピンアルファ150単位群 75名)に無作為に振り分けふった後方視的解析です。(AMH単位換算:1 ng/mL×7.14=7.14pmol/L)
結果:
フォリトロピンデルタ個別用量群またはフォリトロピンアルファ150単位群は、採卵決定時の12mm以上の発育卵胞がそれぞれ12.1 ± 7.0 vs. 18.3 ± 7.0 (P < 0.001) 、血清プロゲステロンレベル 3.18 nmol/l 以上となった割合が 27.3% vs. 62.7% (P < 0.001) でした。それぞれの群における全体の回収卵子数は9.3±6.7 vs. 17.9±8.7(P < 0.001)、新鮮胚盤胞移植後の採卵周期ごとの継続妊娠率は28.2% vs. 24.0%でした。
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)リスクは、初期の中等度または重度のOHSS、初期のOHSSに対する予防的介入、またはその両方において、フォリトロピンアルファ150単位群とフォリトロピンデルタ個別用量群では 16.0% vs. 5.1%(P = 0.025),26.7% vs. 7.7%(P = 0.001) でした。
結論:
レコベル®皮下注ペンの個別用量は卵巣反応を抑制し、結果として排卵前プロゲステロン上昇が少なく、OHSS発症予防のための事前介入を減少させ、OHSS発症を抑制する傾向にあり、有効性・安全性が示されました。
≪私見≫
月経周期の2~3日目に、患者は6㎍、9㎍、または12㎍のフォリトロピンデルタ(レコベル®皮下注ペン)、または150単位のフォリトロピンアルファ(ゴナールエフ®皮下注ペン)の1日量を固定化したリコンビナントFSHアンタゴニスト法にて卵巣刺激を行いました。 ゴナールエフ群は75単位の調整可能となっており、トリガーはオビドレルとなっています。発育卵胞が3個以下、25個以上で中止となります。
この論文はoutcomeがとても面白いです。
ゴナールエフ®皮下注ペン郡は75人中、22.7%で増加、12.0%で減少。レコベル®皮下注ペン群では78人中、増量が42.3%、減量が7.7%の要求が医師からありました(レコベル群は変化させず)。いずれの刺激もOHSS予防のための中止となった症例はありませんでしたが、発育卵胞が3個に達せず中止となったのがレコベル皮下注ペン群で8人、OHSS予防介入のためトリガーを弱めた女性がゴナールエフ皮下注ペン郡で19人いました。
2つの卵巣治療群のrFSH投与量平均差34.5μgは治療周期あたり約500単位に相当しますので、10日間の刺激とすると一日が50単位にあたります。つまりこのアルゴリズムだとhigh responderに対してはゴナールエフ®皮下注ペン100単位/日で卵巣刺激を行っているのと同様の換算になるのだと思います。
文責:川井清考(院長)
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