一般不妊患者に子宮内膜スクラッチは効果がなさそう(論文紹介)

子宮内膜スクラッチは体外受精における原因不明の反復着床不全患者に提供される手技です。では、一般不妊の原因不明不妊患者にも効果があるのでしょうか。
原因不明不妊症の女性で体外受精を用いずにタイミング法を行なっている女性に対して子宮内膜スクラッチが出産率向上に有効かどうか調べた報告をご紹介いたします。

≪論文紹介≫

Tze Yoong Wong, et al. Fertil Steril. 2022. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2021.12.009

2014年6月から2019年12月にかけて、ニュージーランド、イギリス、ブラジルの9つの不妊施設で実施された無作為化、対照、参加者盲検、並行、多施設試験です。参加者は、増殖期に子宮内膜スクラッチを受ける群と、プラセボ群(生検用カテーテルを子宮内に挿入しないで膣内に挿入した群)に無作為に割り付けました。両群とも、その後3周期夫婦生活をおこない出生率を検討しました。
結果:
220名の女性を割り付けました。今回の対象は35歳前後、BMI 24前後、98%が未経産の女性でした。出生率は子宮内膜スクラッチ群では9%(113人中10人),対照群では7%(107人中7人)でした(調整後OR,1.39;95%CI,0.50-4.03)。臨床的妊娠,妊娠継続,流産についても差がありませんでした。
子宮内膜スクラッチが,原因不明の不妊女性の生児率を改善することは認めませんでした。

≪私見≫

原因不明不妊のタイミング・人工授精治療中の患者に子宮内膜スクラッチを提供しても妊娠改善効果がなさそうです。子宮内膜スクラッチは侵襲的な処置です。今回の検討でもペインスケールが4.5±2.3/10点、スクラッチ後の出血が75%に起こりました。やはり体外受精の反復着床不全患者くらい、他の原因を潰して妊娠しない患者に提案すべき手技であると考えています。

文責:川井清考(院長)

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