IMSI

今回はIMSIのお話をさせて頂きます。
IMSIは卵子の中に1つの精子を入れて受精させる卵細胞質内精子注入法(顕微授精)の言わば応用版となる技術です。

IMSIはIntracytoplasmic Morphologically Selected Sperm Injectionの頭文字を取ったもので、意訳をすると「形態的に良好な精子を選別して顕微授精を行う」技術となります。 形態的に良好な精子選別とは、具体的には顕微鏡の倍率を上げて見た目の良い精子選ぶことです。倍率は1,000-6,300倍と報告により様々です。
IMSIの効果ですが、多くの論文で「高倍率で精子選別を行う顕微授精(IMSI)」は「通常の倍率(200-400倍)で精子選別を行う顕微授精」に比べて、受精後の受精卵の発育は良いことが報告されています。この報告を受けて、我々も過去に顕微授精に用いる精子選別の倍率が受精成績および受精卵の発育へ及ぼす影響を調べたことがあります。

精子選別を400倍(通常の顕微授精)と1,200倍(IMSI)で行い、受精率と3日目良好胚率(採卵後3日目に妊娠する可能性が高いと判定された形態が良好な受精卵の割合)を比較した結果、精子選びの倍率を400倍から1,200倍に上げることで、受精率は77%から92%へと、3日目良好胚率は顕微授精をした卵子当たり46%から65%へと上昇しました。こちらの研究成果は2017年のアメリカ生殖医学会にてポスター発表しました。この結果が意味するところは、受精卵の良い発育のためには形態的に良い精子を選ぶことが大切であること、更には、精子は体外受精治療を成功させる上で非常に大事な役割を担っているということです。この結果を受けて、当クリニックでは顕微授精の精子選別の倍率は全例1,200倍で行っています。倍率を上げることで、どのような精子を選んでいるのか?につきましては過去のブログ記事「精子選別」(https://medical.kameda.com/ivf/blog/post_20.html)を見て頂ければと思います。

体外受精治療の成功の鍵を握っている精子選別、これからも精子にとって負荷が少なく、より良い精子選別と回収が出来る方法を模索していきたいと思います。

文責:平岡(培養室長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。