精子選別

培養士の重要な仕事の1つが顕微授精です。顕微授精は卵子の中に一つの精子を入れる技術です。この卵子の中に入れる精子は我々培養士が顕微鏡下で選んでいます。患者様とお話をさせて頂くと「どんな精子を選んでいるのですか?精子を選ぶ基準ってあるんですか?どれ位時間かかるんですか?」と聞かれます。今回は顕微授精の精子選びについてお話をしたいと思います。

当たり前の話ですが、卵子の中に入れる精子は、受精成績や受精卵の成長に大きく影響します。顕微鏡の倍率を上げて形態が良好(見た目が良い)な精子を選んで、卵子の中に入れると受精卵の発育が良くなるという報告が数多くされています。

顕微授精用に集めた精子の形態(見た目)は下の図に示すように様々です。一番左の精子の形態が良好、点線から右側の(1)〜(9)の精子は形態不良です。形態不良である理由は以下の通りです。

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(1)頭部に空胞(穴)がある
(2)頭部が小さい
(3)頭部が曲がっている
(4)頭部が小さい(細長い)
(5)頭部が丸い
(6)尾部が2本ある
(7)頸部が丸い
(8)頭部が大きい
(9)頭部の形が左右非対象

選ぶ精子はもちろん一番左側の"良好"精子です。あえて基準を言うと、(1)〜(9)の不良要素を備えていない【頭部に空胞がなく、首が真っ直ぐで、頭部のサイズが大き過ぎず・小さ過ぎず、頭部の形が左右対称な楕円形、また、頸部にも異常がなく尾部が1本のもの】ということになります。

感覚的な話になりますが、良好な精子の割合が多いと、10〜20個の精子のうち形態良好な精子は1個、この場合、早ければ1〜2分で良好な精子を探すことが出来ます。良好な精子の割合が少ないと(あるいは精子の数が極端に少ないと)、50〜100個の精子のうち形態良好な精子は1個、この場合、10〜30分、時には1時間以上掛けないと良好精子を探すことが出来ない場合もあります。

顕微授精での精子選びのことを知って頂けたら幸いです。

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。