カンジダ腟炎は精子をダメにする(論文紹介)

カンジダ膣炎の原因菌であるCandida albicansが精子の運動性を阻害する作用はin vitro研究で1977年にTuttleらによって報告されています。その後、Candida albicansが、体外受精による卵子への受精を阻害し、精子のDNA断片化を増加させることがBurrelloら2004年報告されています。定期的に精子への影響にふれた論文は報告されていて事実で間違いなさそうなのですが、その中では精子の運動能が速やかに低下し、形態変化も起こすと書かれていて、「速やか」がどの程度の時間なのか、「形態変化」がどのような変化なのか調べていくと、この論文に到達しました。C. albicansとその濾液(C. albicans本体ではなく、自身が作り出す産生物による影響をみるため)が精子の運動性に及ぼす影響をCASAを用いて評価するとともに、超微細構造の変化や精子の接着光学顕微鏡と透過型電子顕微鏡で評価した報告です。

≪論文紹介≫

Yong-Hong Tian, et al. Int J Androl. 2007. DOI: 10.1111/j.1365-2605.2006.00734.x

健康な男性から採取したヒト精子の運動性と超微細構造に対するCandida albicansとその濾液のin vitroでの影響を調べました。精子はCandida albicans周囲に 精子の運動性が著しく低下し、精子膜構造の変化の兆候がすぐに観察されました。

①光学顕微鏡
Candida albicansの(仮性)菌糸へ精子が付着していくのが顕著
②透過型電子顕微鏡
Candida albicansおよび濾液と一緒に4時間培養した精子の観察では複数の超微細構造の病変が認めました。部位の変化はCandida albicans本体、濾液、コントロール群で以下のとおりで頭部に著名に現れました(先体: 90.31% vs. 82.96% vs. 13.74%;頭部 40.43% vs. 38.52% vs. 14.16%、中間部:77.73% vs. 72.04% vs. 16.58%、尾部 28.02% vs. 26.11% vs. 4.56%)。
頭部(先体以外):細胞膜の破裂と精子核の空胞化の増加に
先体:腫脹、破裂、剥離、先体下の空隙の拡大
ミトコンドリア:腫脹、配列の変化、低密度など
尾部:形態変化にくわえカール様変化
③運動性
Candida albicans群では培養直後(0時間、p < 0.05)に精子の運動性に有意な影響を与えました。濾液群でも2および4時間後には運動性に低下を認めました。直線速度と曲線速度でもCandida albicans群では培養直後から、濾液群では4時間後には低下を認めました。

≪私見≫

夫婦生活をもつ場合、カンジダ腟炎は治療することをお勧めいたします。また男性は女性に比べ感染しにくいといわれていますが、カンジダ性の亀頭周囲炎(亀頭や陰茎の周囲に白いカスや発疹の出現、軽い痛み、かゆみなど)も一定数いますのでケアが必要です。夫婦生活後にカンジダ腟炎になりやすい人はパートナーにも症状がないかどうか確認が必要ですね。
ちなみにカンジダ酵母は大きさ 2-3 μmで、精子(頭部5μm前後、尾部までいれると50 µm)に比べて小さいのですが、カンジダ酵母は(仮性)菌糸を出すと通常の顕微鏡での観察できるようになります。

文責:川井清考(院長)

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