不妊検査の推奨項目(子宮・付属器の異常:アメリカ生殖医学会)

アメリカ生殖医学会の一般不妊検査の推奨項目です。総論・排卵機能・卵巣予備能に続き、今回の形態評価についてご説明いたします。

Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine.
Fertil Steril. 2021. PMID: 34607703

※子宮頚管因子

円錐切除などの外科的手術の既往やおりものの異常などがある場合、子宮頚部を検査すると狭窄や慢性頸管炎などの病変が発見されることがあります。子宮頚管粘液の分泌異常や精子と粘液の相互作用が不妊の主原因となることは稀なことであり、以前頻繁に行われていた性交後検査は主観的で再現性が低く、妊娠予測とも関係がなく、結果によって治療方針が変わることもないため臨床管理を変えることはほとんどないため推奨されなくなってきています。

※子宮の異常

不妊に影響を与える子宮の形態異常は、不妊症の評価を受ける女性の16.2%に見られ、最も多いのは内膜ポリープ(13%)、粘膜下筋腫(2.8%)、癒着(0.3%)とされています。子宮からの不正性器出血がある女性では、子宮の異常の割合が39.6%に増加するとされています。

  • 超音波検査は最適な画像診断法です。詳しく子宮を評価するために、3D超音波やMRIを用いることがあります。
  • 子宮卵管造影検査は、子宮腔の大きさや形状(単角子宮・中隔子宮・双角子宮などの先天性形態異常、子宮内膜ポリープ、粘膜下筋腫、癒着などの後天的な異常)を評価することができます。子宮卵管造影検査は無症候性不妊女性の子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫の診断において、感度(50%)および陽性適中率(PPV)(30%)が比較的低く、中隔子宮・双角子宮などの区別もできないため、3D超音波やMRIとあわせて評価することが求められます。
  • 子宮腔内に生理食塩水を注入して経膣超音波検査を行うソノヒステログラフィー(SHG)は、子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫の検出において90%以上と高い陽性適中率であることがわかっています。
  • 子宮鏡検査は、子宮内病変の診断および治療の決定的な方法です。

※卵管評価

  • 子宮卵管造影検査は近位または遠位の卵管閉塞、結節性卵管炎を診断します。造影剤の流出が遅れたり、卵管からの造影剤の排出部位が延長したりする場合は卵管周囲の癒着などを疑います。両側の近位卵管閉塞所見は、一過性の卵管・子宮の収縮やカテーテルの位置に関連して起こるアーチファクトの可能性があります。
  • ソノヒステログラフィーは卵管疎通性評価も可能ですが腹腔内に生理食塩水が貯留したかどうかが判断材料にあり、どちらの卵管が通っていたか細かく評価することは難しいとされています。食塩水に気泡をまぜ超音波で判断しやすい状況を準備しソノヒステログラフィーをおこなう子宮卵管造影超音波検査は標準的な子宮卵管造影検査に比べてオペレーターの手技・判断経験に左右されることがありますが、感度 76%~96%、特異度 67%~100%と比較的良好です。
  • 子宮鏡下卵管通気・通色素検査は6つのメタアナリシスで感度88%、特異性85%と卵管疎通性検査を評価する上で有用だと示されています。
  • 腹腔鏡で卵管疎通性を判断することは推奨されていません。しかし行う場合は通色・水検査を併用することは有用ですし、同時に癒着剥離なども行うことが可能となっています。
  • 採血によるクラミジア抗体検査は卵管病変と関連しています。しかし卵管疎通性を予測する臨床的有用性には欠けています。腹腔鏡検査と比較してクラミジア抗体陽性の場合、感度(40%〜50%)、陽性適中率(60%)は高くないですが、卵管遠位部の卵管疎通性を検出する陰性適中率(80%〜90%)は高いことがわかっています。クラミジア抗体検査が陰性の場合は、卵管遠位の閉塞は少ないことがわかります。

※腹腔内因子

  • 子宮内膜症や骨盤内・付属器周囲の癒着は、不妊症の原因となる可能性があります。問診票や検査から疑われることがありますが確定診断に至ることは難しいとされています。原因不明不妊には一部腹腔内因子が原因である可能性があります。
  • 超音波検査では子宮内膜症などで骨盤内病変を見つけることが可能であるが、確定診断には至りません。
  • 腹腔鏡検査は腹腔内因子を確定する唯一の検査法です。しかし、軽度の子宮内膜症がどの程度、不妊に影響するかなどはわかっておらず、治療目的ならよいが腹腔内因子の精査のための検査としての腹腔鏡の実施は現在では推奨されていません。

≪私見≫

子宮・付属器の形態評価は基本ではありますが、不妊治療においてどのように介入すべきか評価が難しい部分です。腹腔鏡を診断目的で実施するのを推奨しないのは、患者様への侵襲を考えてもよいかもしれません。

文責:川井清考(院長)

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