卵巣刺激抵抗性の患者がIVMで出産報告(論文紹介)
原発性もしくは続発性無月経の患者様の中で、かなり稀ですが、卵巣予備能が保たれているのに卵巣刺激をしても育って来ない女性がいます。
Gonadotropin-resistant ovary syndrome (GROS)と呼ばれています。
GROSの主な特徴は、高ゴナドトロピン血症、正常な数の胞状卵胞数、そして外因性ゴナドトロピン刺激に反応しないことです。GROSの病因は自己免疫疾患、遺伝的素因など言われていますが、現在のところ不明です。排卵しないと妊娠することができないわけですが、体外培養を行うことで出産に至った二例を報告しています。
≪論文紹介≫
Ho Long Le, et al. J Assist Reprod Genet. 2021. DOI: 10.1007/s10815-021-02355-2
二例ともFSH 300単位 4日投与の後、FSH 600単位 3日投与しても卵胞発育がない症例なので、少しFSH投与して反応が乏しいpoor responderとは少し異なる無月経症例です。
27歳女性であり、1例目はFSH 46 IU/mL LH 48 IU/mL AMH 2.22 ng/ml、AFC 14、2例目はFSH 92 IU/mL LH 35 IU/mL AMH 5.53 ng/ml、AFC PCOS様でした。これらの症例にFSH3000単位投与後hCG10000単位使用しIVM採卵を実施。1例目は回収卵 7 受精卵 2 初期有効胚1、2例目は回収卵 13 受精卵 5 初期有効胚 5であり、共に出生に至っています。
≪私見≫
「GROSかも?」と思う症例は私が千葉で生殖医療に関わってから1-2例しか経験しておらず、非常に稀な疾患だと思います。しかし、このような出産に至った前例ができたことは患者様に提示する選択肢が増えるため嬉しいことですね。ホーチミンはIVMの第一人者がいる国で、プロトコールも確立しているはずなので、いつかは見学に訪れてみたいと思います。
2022年4月以降の体外受精保険適応にもIVMはPCOS患者の選択肢に含まれており、適切な症例を選ぶことにより有効な手段として活用できると考えています。
文責:川井清考(院長)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。