体外受精における異所性妊娠のリスクは?(論文紹介)

日本産科婦人科学会の体外受精登録で2019年の体外受精妊娠あたりの異所性妊娠率は、新鮮胚移植(IVF、split、ICSI)で1.31%(114/8689)、凍結融解胚移植で0.67%(498/74595)でした。当院の現在までの体外受精(新鮮胚、凍結融解胚移植)での異所性妊娠率も同等(6/1534)です。では体外受精において異所性妊娠のリスクはどのような因子があるのでしょうか。報告をご紹介させていただきます。

≪論文紹介≫

Zhiqin Bu, et al.  F.ertil Steril. 2016.DOI: 10.1016/j.fertnstert.2016.02.035

2009年6月から2015年8月までの18,432例の体外受精妊娠および人工授精妊娠における異所性妊娠のリスクを検討したレトロスペクティブコホート研究です。患者背景や治療方法と異所性妊娠の発生率を検討しています。
結果:
体外受精において異所性妊娠の発生率は、初期胚移植と胚盤胞移植で異なっていました(3.45% vs. 2.47%)。多変量ロジスティック回帰分析では卵管性不妊は異所性妊娠と関連していました(調整オッズ比1.716,95%CI 1.444-2.039)。人工授精では卵巣刺激周期の方が自然周期に比べ異所性妊娠の発生率は高くなりました(2.62% vs. 0.99%)。ドナー精子と夫精子を用いた周期の異所性妊娠率は、それぞれ1.08%と3.54%でした。
卵管性不妊に基づいて層別化すると、異所性妊娠率は新鮮胚移植周期ではエストロゲンのピーク値と相関して増加しました。凍結融解胚移植周期では胚盤胞移植で移植した胚数が少ない方が異所性妊娠リスクは減少しました。

≪私見≫

体外受精と異所性妊娠リスクは様々です。
・PCOS患者において高エストラジオール群(>4,085 pg/mL)が低エストラジオール群に比べリスク上昇(3.4% vs. 2.0%)(Wang J,et al. 2013)
・SARTレジストリの91,504個の採卵では回収卵子数の増加が関連(Achaya KS, et al. 2015)
・新鮮胚移植が凍結融解胚移植より、凍結融解胚移植では排卵周期がホルモン補充周期より高い(Huang B, et al. 2014. Decleer W, et al. 2014)

今回の結果では初期胚移植>胚盤胞移植、新鮮胚移植周期ではエストロゲンのピーク値 高い>低い、移植胚数 多い>少ないで異所性妊娠リスクが増加しています。
これらのことから異所性妊娠リスクが高い患者(卵管性不妊や回収卵が多い患者)には胚盤胞凍結とし別周期に移植が好ましいと思います。
それ以外にも移植時のプロゲステロン値や移植手技・移植部位・培地量などによっても差がでるのではないかとされています。

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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