液体窒素

今回は卵子・精子・受精卵の凍結保存に欠かせない液体窒素についてお話します。

卵子・精子・受精卵を凍結保存する場合、これらの検体に適切な処理(極々簡単に言うと細胞内の水分を抜く)を施した後、保管するのは液体窒素の中です。窒素の性質は以下の通りです。

  • 空気中に約78%含まれている身近な物質
  • 沸点は-196℃
  • 気化した場合、室温で約700倍に膨張
  • 無色透明で無味無臭

沸点が-196℃であることから、液体窒素の中の温度は-196℃ということになります。

液体窒素を取り扱う上で、特に気を付けないといけないのが、

  • 爆発
  • 窒息
  • 凍傷

の3点になります。

【爆発】
前述通り、液体窒素が気化すると体積は約700倍に膨張します。仮に、液体窒素を保管している容器を密閉すると、蒸発した窒素ガスが行き場を失い圧縮され、高圧となり保存容器が破裂を起こします。保存容器を絶対に密閉してはいけないことは言うまでもありません。

【窒息】
これも、液体窒素が気化すると体積は約700倍に膨張することと関連しています。仮に、床に多量の液体窒素をこぼすと、蒸発した窒素が空気中の酸素濃度を下げることで酸欠になります。因みに空気中の酸素濃度は20%ちょっとですが、酸素濃度が18%になると「安全の下限界」、10%になると「中枢神経障害、意識喪失、嘔吐」、6%になると「即失神、心肺停止、短時間で死亡」となります。液体窒素を使用するときは、床にこぼさないこと、換気が必要であることは言うまでもありません。

【凍傷】
液体窒素が衣類にかかると染み込んで、液を滞留させることで皮膚が凍傷になります。液体窒素を使用するときは、衣類にかからないように注意することは言うまでもありません。

以上、卵子・精子・受精卵の凍結保存に欠かせない液体窒素についてお話ししました。取り扱いを誤ると大変危険な事態を招く怖いものですが、正しい知識で正しく取り扱うことで患者さんの大切な検体を安心・安全に保管します。

文責:平岡謙一郎(培養室長)

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