精液所見が悪い場合、自然妊娠するの?(当院の結果をふまえて)

患者様から精液所見が悪い場合に本当に妊娠しないの?という質問をよく受けるので調べてみました。一般的には女性の年齢が若いと、精子を修復する機能があり妊娠に至ると言われていますが、どうでしょうか。
『生殖医療の必修知識』(一般社団法人 日本生殖医学会)では自然妊娠が可能な精液の総運動精子数は900-1500万個、人工授精が有効なのは1000万個以上とされています。総運動精子数が100-1000万個の場合は不妊期間が2年以上あるなら体外受精の適応と考えられています。
2020年12月までに当院で原精液の総運動精子数が1000万以下でタイミング療法妊娠に至った女性は9名(平均年齢 33.1歳:28-37歳、タイミング平均治療回数 1.67回:1-3回)いらっしゃいます。女性年齢が比較的若く、タイミング治療周期の早い段階での妊娠が多くなっています。残念ながら妊娠に至った9名中4名(44.4%)が流産に至りました。当院のタイミング療法の流産率は21.6%(128/725)ですので、比較しても高い傾向があるのではと考えています。

妊娠継続している総運動精子数1000万以下の5症例

女性年齢 流産歴 タイミング治療回数 妊娠前の総運動精子数 男性不妊外来
29 1 2 90万,670万 なし
28 0 2 930万 なし
37 0 2 60万 なし
37 0 2 1100万,820万 あり(生活習慣)
34 0 1 580万,970万 あり(精索静脈瘤)

アメリカ生殖医学会の男性不妊ガイドラインでも男性因子が流産の原因になると明記されています。男性所見が悪い場合はタイミングでの妊娠しないわけではありませんが、早期に男性不妊外来を受診し精査、そして夫婦の不妊治療の方針をあわせて相談していく必要があるのだと感じています。

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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