子宮内異常を評価はソノヒステログラフィー?子宮鏡?(論文紹介)

慢性子宮内膜炎の概念が広まってから、子宮内腔への妊娠寄与に対する検査を定期的に行うような風潮となっています。慢性子宮内膜炎検査は組織検査で痛いですし、ルーチン検査としては考えていませんが、子宮内腔の評価のためのソノヒステロや子宮鏡は、その周期もタイミング・移植なども行えて時間のロスもないので有用かと思っています。
この論文は通常の経膣超音波検査で異常を認めていない患者に対してソノヒステロや子宮鏡は有用かどうかと患者・実施医療者に確認したものです。

注:ソノヒステログラフィー(sonohysterography ; SHG) :子宮腔内にカテーテルを挿入し、生理食塩水を注入しながら経腟超音波検査を行うことで、子宮内の状態をより明確に描出する方法。

Sarah Moustafaら.J Assist Reprod Genet. 2021.  DOI: 10.1007/s10815-021-02065-9.

≪論文紹介≫

体外受精-胚移植前にソノヒステログラフィ(生理食塩水を子宮内に注入し超音波で子宮内部の凹凸を見る方法)と子宮鏡検査を行い、満足度などを比較しました。
大学の不妊治療クリニックで行われた前向き無作為化比較試験です。胚移植を計画する前に定期的に子宮腔内検査を受けている100名の登録者(2019年12月から2020年6月までの間に以前に子宮内腔の異常を指摘されていない18―50歳の女性)が、ソノヒステログラフィまたは麻酔なしの子宮鏡検査に無作為に割り付けられました。被験者と実施医療者はアンケートに記入しました。ソノヒステログラフィで異常があった患者は、子宮鏡検査を受けるか、さらなる評価を受ける予定としました。子宮鏡検査所見のあった者は、同一管理を試みました。
結果:
患者の満足度は全体的に高く、群間に差はありませんでしたが、実施医療者は子宮鏡検査の方がより子宮内腔を評価できると指摘しています。実施時間にも差がありませんでした。10段階評価での疼痛スコアは、ソノヒステログラフィ群に比べて子宮鏡検査群でわずかに高くなりましたが(3.38±1.85 vs. 2.44±1.64、p<0.01)、満足度スコアには影響しませんでした。
事前に大きな異常を指摘されていない患者の中で、実施によって子宮内の異常がみつかった割合は同程度の割合(ソノヒステログラフィ群22% vs. 子宮鏡群36%)でしたが、ソノヒステログラフィ群ではすべて追加検査が必要であったのに対し、子宮鏡群では1/17程度にとどまりました(p < 0.01)。
結論:
子宮鏡検査群では痛みのスコアがわずかに高くなりましたが、患者と医療提供者の満足度は全体的に高く、両群間では同程度でした。子宮鏡検査群では、追加検査が有意に少ない結果となりました。子宮鏡検査は子宮内評価を必要とする患者にとって、妥当なファーストラインのスクリーニングツールと考えられます。

≪私見≫

私たちも、普段からソノヒステログラフィーより子宮鏡を実施しています。この論文でも書かれていますが、共に検査時間は4分前後、痛みも10段階で3前後ですので、実施できる環境なら情報量が多い子宮鏡に軍配が上がるかもしれません。

この論文での新たな気づきはRPOC(retained products of conception:前回の流産後の絨毛の遺残)が意外と気付かれず存在する点(今回のケースでは約21%:6/29)です。RPOCの割合は文献によって異なりますが、流産後に内膜に違和感を感じた場合や早々に胚移植をする場合は子宮内を確認するのも大事なのかもしれません。

文責:川井清考(院長)

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