胚盤胞の凍結

受精卵は発育過程でボールから風船のような形に姿を変えます。受精卵が風船のような形になっている時期は専門用語で胚盤胞と呼ばれています。

 

胚盤胞は水風船の様になっており、風船部分は栄養芽層と呼ばれ将来は胎盤となり、風船の内側には内細胞塊(将来赤ちゃんとなる細胞)がくっ付いており、風船の内側は水で満たされています。胚盤胞の内側は水で満たされていることから、仮にこのままの状態で凍結すると、胚盤胞内部の水が凍って氷の結晶が出来、これが物理的に胚盤胞を破壊してしまいます。したがって、胚盤胞の凍結保存を成功させるためには、この胚盤胞の内側にある水の量を減らすことで、氷の結晶が出来ない様にする必要があります。

 

当クリニックでは胚盤胞を凍結する前に、栄養芽細胞同士の繋ぎ目にレーザーを当てて小さな穴を開けて、内部の水を自然に外部に流れ出させることで、水の量を減らしています。

 

栄養芽細胞同士の繋ぎ目にレーザーを当てると、そこから胚盤胞内部の水が抜けて出て、やがて胚盤胞は縮んでいきます。

 

この縮み方は胚盤胞毎に異なり、ある胚盤胞は水が抜けて完全に縮んだ様になっていたり、ある胚盤胞は水が完全に抜けず元の大きさよりも若干小さくなっていたりと千差万別です。因みに、この縮み方のバリエーションは凍結・融解後の生存率、胚移植後の妊娠率には全く影響しません。

 

このレーザーを用いて胚盤胞を収縮させる凍結方法は以下の論文を参考にさせて頂いております。

Mukaida T,Oka C, Goto T, Takahashi K: Artificial shrinkage of blastocoeles using either a micro-needle or a laser pulse prior to the cooling steps of vitrification improves survival rate and pregnancy outcome of vitrified human blastocysts. Hum Reprod. 2006 Dec;21(12):3246-52. doi: 10.1093/humrep/del285.

向田先生らは、このレーザーを用いて胚盤胞を収縮させる方法により、解凍後の生存率を約11%、妊娠率を約26%改善出来たことを報告されています。
以上、当クリニックで行われている胚盤胞の凍結方法を少しでも知って頂けたら幸いです。

文責:平岡(培養室長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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