透明帯孵化補助では、透明帯にどんな風に穴が開いているの?
以前のブログ記事で、当クリニックでは凍結融解した胚盤胞に対して、全例、透明帯孵化補助を実施していること、そして、胚盤胞の透明帯全周の半分以上の大きさの穴を開けていると報告しました。実際、どんな風に穴を開けているのか?どんな風に穴が開いているのか?は分かりづらいので、今回はその辺りについて解説したいと思います。本来ならば、もっと早くお伝えしたかったのですが、文章と図だけで分かり易く説明する自信が全くなく、ずっと先延ばしにしていました。
先ず、透明帯に穴を開ける方法ですが、当クリニックではレーザーを使用しています。下の図のように胚盤胞の下にレーザー装置が設置されており、レーザー光線は下から上に向かって真っすぐ照射されます。顕微鏡下で、胚盤胞の透明帯、穴を開けたい場所とレーザーが照射される場所が重なる様に位置を微調整して、下の図②のようにレーザーを照射すると、下の図③のように透明帯に穴が開きます。
1回のレーザー照射により透明帯に開く穴(球体の曲面に対してレーザーが円柱状にかすって当たるので穴は少し細長い形になります)は小さく、点のような穴でしかないので、連続してレーザーを照射することで、点のような穴を繋ぎ合わせてギザギザの線にして、透明帯への切り口を拡げていきます。下の図左側にありますように、レーザーを3回、穴同士が近い所で照射した場合、下の図右側のように3個の穴が繋ぎ合わさって透明帯に切り口が出来ます。
透明帯孵化補助により、下の図の左側の写真のように時計3時方向にそこそこ大きな穴が開いているように見えると思いますが、実際には下の図右側のイラストの様に小さな切り口が入っているに過ぎません。球体の貯金箱のお金を入れる穴(少しギザギザした穴になっています)のようになっているイメージです。
当クリニックで行っている透明帯孵化補助では、全例、下の図の右の写真のように透明帯の半分以上に穴を開けることにしていますが、それでは、この右下の写真の透明帯の穴の開き方はどのようになっているのでしょうか?
一見すると、胚盤胞本体の右半分が透明帯の外に完全に出ている様に見えると思います。
しかし、実際は下の図の右側のイラストのように、球体の貯金箱のお金を入れる穴(少しギザギザしています)が細長く広がって、赤道面の円周の半分に渡って切り口が入っている状態になっています。
以上のことから、透明帯の半分に穴を開けた場合、下の図の左側のように、切り口が赤道面半分に入っているだけで、下の図右側のように、胚盤胞の右半分が剥き出しになっているのではないことがお分かり頂けると思います。
以上、透明帯孵化補助操作は、実際は立体構造:3次元で行われていることを、顕微鏡画面上では平面:2次元で映し出される中で実施しなければならないことから、実際の立体構造の状況把握がしづらい操作となります。したがって、培養士への透明帯孵化補助のトレーニングでは、透明帯に見立てたボールとレーザーに見立てた細い円柱状の棒が必需品で、これらを駆使して3次元で起きている現象を徹底的に理解してもらうよう努めています。
当クリニックで行われている透明帯孵化補助により、どのような穴が開いているのかを少しでも知って頂けると嬉しいです。
文責:平岡(培養室長)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。