当院の凍結融解胚移植の黄体補充方法とERA検査の実施時期(当院のデータをふまえて)

ERA検査、以前何回にわたりブログでとりあげましたが本当にいつ勧めるべきか難しいです。理由は2つで、①ERA検査を行う費用が約15万(EMMA、ALICEまで行うと20万近く)すること、②ERA検査を行っても100%その後の妊娠が担保されるわけではないからです。ただ、ERA検査など着床不全の検査を強く勧めなかったことを移植成績が陰性になってから後悔することもあります。当院にいらっしゃってERA検査を受ける患者様には時間をかけて説明を行なっておりますが、体外受精のweb説明会でお聴きになる方には限られた時間の中でしかお伝えできませんのでこちらで記載させていただきます。
ご質問等がございましたら来院時にご相談ください。

①当院の凍結融解胚移植の黄体補充方法

凍結融解胚移植の場合、(1)受診日を調整してほしい方、(2)採卵後すぐに移植したい方、(3)黄体機能不全がある方はホルモン補充周期凍結融解胚移植を勧めています。
反対に排卵周期凍結融解胚移植を勧めている方は、(1)自然妊娠既往がある方、(2)薬へのアレルギーが強い方、(3)前回妊娠時の胎盤に由来する周産期合併症があった方、(4)時間的にゆとりがある方としています。
結果、大半の方がホルモン補充周期凍結融解胚移植から開始します。以前は一度着床不全があった段階でERA検査等の着床不全検査を提案していましたが、最近では費用対効果を考え、できるだけ患者様の費用負担が増えないようにするためにも排卵周期凍結融解胚移植を行うことを先に勧めています。ERA検査等はその後に実施することが多いですが、あとは当院の成績と患者様の状況をみて判断しています。

②ERA検査の検査結果

当院で実施した180名のデータです。ポイントを記載します。
A)24時間の補正を行う必要がある方が4人に1人、12時間の補正を行う必要がある方が5人に1人いる点です。不妊症で悩んでおられる方の中には一定数、内膜のずれがある方がいることがわかります。
B) 移植できる有効移植胚がなかなか準備できない症例には、移植をする前にERA検査を実施することもありますが、やはり一定数、内膜のずれのある方が見つかってきます。ただ、「内膜のずれがあるから絶対妊娠しない」ということを証明した報告がない以上、偶然見つかっただけで普通に戻しても妊娠するのかもしれません。

③ERA後の妊娠率

当院で2回以上の反復着床不全を認めERA検査を実施し、個別化調整後胚移植をした方の妊娠率を検討しました。ERA後初回胚移植の臨床妊娠率 44.6%(女性平均年齢 38.2歳 79症例)、ERA後2回目胚移植の臨床妊娠率 41.8%(女性平均年齢 39.1歳 56症例) でした(着床前診断を行なっていません)。ERA検査を実施していない方の3回目に移植した場合の臨床妊娠率は31.8%(女性平均年齢 38.2歳 280症例)ですので、反復着床不全の方にはERA検査を実施する価値があると思っています。
ただ、患者様からすると費用負担もあり、移植を2ヶ月近く先送りにしていますので少し満足いかない数字なのかもしれません。

今後も最新知見を日々確認しながら、私たちのデータをふまえ患者様に情報提供できるよう心がけていきたいと思います。

Igenomixのホームページにわかりやすい動画がありますので、こちらもぜひご覧になってみてください。https://www.igenomix.jp/our-services/era-pacients/

文責:川井(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。