胚の再凍結・再生検が凍結融解胚移植の妊娠予後に与える影響(Fertil Steril. 2025)

【はじめに】

1990年に初めて2回の凍結保存後の妊娠成功例が報告され(Macnamee, et al. 1990)、その後Kumasakoら(2013)は再凍結胚でも臨床妊娠率や着床率に有意な影響がないと報告しました。一方、Chenら(2015)は再凍結胚で着床率と臨床妊娠率の低下を、Bradleyら(2017)はPGT患者において妊娠率13%、生児出生率23%の低下を報告するなど、一致した見解が得られていませんでした。システマティックレビューおよびメタアナリシスは定期的にでていますが、2025年現在での報告をご紹介いたします。

【ポイント】

胚の再凍結は一度凍結した胚と比較して生児出生率・臨床妊娠率の低下と流産率の増加をもたらし、再生検も生児出生率を低下させます。着床率はあまり低下は認められなさそうです。

【引用文献】

Yuan Yang, et al. Fertil Steril. 2025 Jun;123(6):1051-1061. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.12.008.

【論文内容】

体外受精における胚の再凍結と再生検が生殖医療成績に与える影響を調査することを目的としたシステマティックレビューおよびメタアナリシスです。PubMed、Embase、Cochrane Library、Web of Science、CBM、CNKI、WanFang Data、VIPデータベースを用いて2023年5月まで検索を行いました。主要評価項目は生児出生率で、副次評価項目として臨床的妊娠率、着床率、流産率、異所性妊娠、早産、新生児平均出生体重、新生児奇形を評価しました。
結果:
19の後方視的研究が含まれ、合計11,024の凍結融解胚移植周期が解析されました。すべての凍結融解胚移植周期において、再凍結は一度凍結と比較して生児出生率の低下(OR、0.79; 95% CI、0.60–0.92; I²=21.7%)、臨床的妊娠率の低下(OR、0.74; 95% CI、0.60–0.92; I²=56.9%)、流産率の増加(OR、1.27; 95% CI、1.03–1.55; I²=37.1%)を示しました。再生検後の妊娠成績では、単回生検と比較して生児出生率の低下(OR、0.65; 95% CI、0.45–0.94; I²=43.5%)、臨床的妊娠率の低下(OR、0.75; 95% CI、0.54–1.03; I²=29.6%)、流産率の増加(OR、1.54; 95% CI、0.89–2.66; I²=13.0%)と関連していました。

【私見】

胚の再凍結や再生検が妊娠成績に悪影響を与えることを示す重要な報告です。これまでも成績低下の是非については様々な議論がされており、やはりラボワークの実力差なども影響すると思われます。ただ、比較的目に見えやすいほどの成績的を認めている報告も多いので再凍結・再生検には十分な説明が必要かと思います。
「一度凍結した胚と比較すると、再凍結胚では出生率が約2割低下、再生検胚では出生率が約3割低下します。ただし、出生する可能性はゼロになるわけではありません」というのが説明になるでしょうか。
また、今回の研究では一度凍結胚(対照群)は全てvitrificationでしたが、再凍結胚(介入群)は、4研究:初回緩慢凍結→ 2回目vitrificationが含まれていました。サブグループ解析の結果では、緩慢凍結→vitrification群:生児出生率低下(OR, 0.69; 95% CI, 0.51–0.93)、vitrification→vitrification群:生児出生率低下(OR, 0.81; 95% CI, 0.70–0.94)と緩慢凍結の方がダメージは大きそうです。

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文責:川井清考(院長)

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