不育症管理の治療指針(第3版:令和7年5月改訂):検査について
不育症管理の治療指針(第3版:令和7年5月改訂)がアップデートされました。2021年より大幅にエビデンスが上乗せされています。
【不育症の定義】
「流産あるいは死産が2回以上ある状態」と定義される。生児の有無は問わず,流産または死産が連続していなくてもよい。異所性妊娠、胞状奇胎、生化学的流産は流産回数に含めない。
当提言では、臨床的流死産歴が1回でも、次回妊娠における流死産のリスクが高いと推定される状態を「不育症」の概念に含めるとされています。
【不育症の頻度】
生殖年齢で妊娠歴のある女性における不育症患者の頻度は、不育症5%, 習慣流産1%である。
【問診項目】
年齢、既往妊娠、生殖補助医療既往、身長・体重・BMI、喫煙歴・アルコール摂取歴、カフェイン摂取、夫の情報を確認することが推奨される。
【検査カテゴリー】
推奨検査(臨床的エビデンスが十分にあり推奨される検査)
子宮形態検査
3D 超音波検査
ソノヒステログラフィー(2D 超音波検査)
子宮卵管造影検査(HSG)
抗リン脂質抗体
抗 β2GPI IgG 抗体
抗 β2GPIIgM 抗体
β2GPI 依存性抗カルジオリピン抗体(IgG)
抗カルジオリピン IgG 抗体
抗カルジオリピン IgM 抗体
ループスアンチコアグラント(LA)
dRVVT(希釈ラッセル蛇毒時間)法(蛇毒法)
aPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)法
夫婦染色体検査
染色体G分染法
内分泌検査
TSH、fT4
流死産・胎児絨毛染色体検査
流死産・胎児絨毛染色体検査(G分染色法)
選択的検査(エビデンスが不十分だが、ある条件下では推奨される検査)
子宮形態検査
MRI
子宮鏡検査
血栓性素因関連検査
プロテインS(総プロテインS抗原量、遊離プロテインS抗原量、プロテインS活性、プロテインS比活性)
第Ⅻ因子凝固活性
プロテインC
アンチトロンビン
抗リン脂質抗体
抗フォスファチジルエタノールアミン(PE)抗体 IgG
抗フォスファチジルエタノールアミン(PE)抗体 IgM
フォスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン(PS/PT)抗体
ネオセルフ抗体(抗β2グリコプロテインI/HLA-DR抗体)
自己抗体検査
抗TPO抗体
抗核抗体
研究的検査(不育症との関連が示唆されているが、エビデンスが不十分で研究段階の検査)
免疫学的検査
末梢血:NK活性、NK細胞率、制御性T細胞率
子宮内膜:CD56brightNK細胞率、CD56dimNK細胞率、KIR陽性率、制御性T細胞
慢性子宮内膜炎と子宮内フローラ
子宮内膜形質(CD138陽性)細胞
子宮内フローラ
男性因子に関する検査
精子DFI検査
非推奨検査(不育症の検査として推奨されない検査)
免疫学的検査
夫婦HLA検査(一致率)
混合リンパ球反応(MLR)
ブロッキング抗体検査
抗HLA抗体
サイトカイン定量、サイトカイン遺伝子多型
Th1/Th2細胞比(IFN-γ/IL-4 Th細胞比)
抗精子抗体
内分泌的検査
LH
P4値
Androgen
プロラクチン
AMH
インスリン
【私見】
提言2025は「RCT/コクランレビューで裏付けが弱いものは“非推奨または研究的”」とするスタンスであり、当然と言えば当然です。ただし、今回アップデートされたものも抗凝固療法をすすめるためのSNAPS診断のための検査が中心で、免疫検査・免疫治療は次回改訂に期待するといったところでしょうか。国内の行える検査・治療状況を踏まえて選択することが重要です。
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文責:川井清考(院長)
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