不育症患者の子宮内膜細菌叢(J Reprod Immunol. 2022)

【はじめに】

不育症原因には子宮形態異常、甲状腺機能障害、抗リン脂質症候群、先天性凝固素因、染色体異常などさまざまな要因が関与しています。不育症の50%以上は原因不明であり、「原因不明不育症」と呼ばれ、免疫素因含めて様々な因子が考えられています。近年、培養より感度が高い細菌叢解析が可能になりました。

【ポイント】

不育症女性の子宮内膜におけるウレアプラズマ種の増加は、その後の妊娠における正常染色体核型の流産および早産のリスク因子となります。

【引用文献】

Yutoku Shi, et al. J Reprod Immunol. 2022 Aug:152:103653.  doi: 10.1016/j.jri.2022.103653.

【論文内容】

子宮内膜細菌叢が反復流産(RPL)女性の妊娠転帰と関連するかどうかを評価することを目的とした前向きコホート研究です。研究には2回以上のRPL歴を持つ67名の女性が登録され、黄体中期に16S リボソームRNAシーケンスによる子宮内膜細菌叢解析のために子宮内膜生検を実施しました。検査はVarinos社で行われ、16S rRNA遺伝子の可変領域4(V4)をPCRで増幅し解析しています。不適切な検体の4人は除外し63名は14か月以上フォローアップされ、44名が妊娠しました。44名の妊娠のうち30名は生児出生に至り、24名が正期産、6名が早産でした。3名の妊娠は継続中で、残り11名は流産で終わり、8名は正常染色体核型の流産、3人は異常核型の流産でした。
結果:
多変量ロジスティック回帰分析の結果、過去の流産回数(OR 42.2、95%CI 1.19-1490、p=0.040)と子宮内膜細菌叢におけるウレアプラズマ種の相対優位率(OR 24.2、95%CI 1.55-377、p=0.023)が、その後の正常染色体核型の流産の独立した危険因子であることが明らかになりました。また、子宮内膜細菌叢におけるウレアプラズマ種の相対優位率は早産のリスク因子(OR 109、95%CI 1.07-1110、p=0.047)でもありました。

【私見】

ウレアプラズマは子宮内感染、絨毛膜羊膜炎、妊娠転帰不良の原因となることが知られています。不育症女性の妊娠前にウレアプラズマやガードネレラを減少させ、ラクトバチルスを増加させる介入(抗生物質治療やプロバイオティクス)の有効性を期待させる結果となっています。
同グループは先行研究として、切迫早産と早産分娩における膣内微生物叢の関連性を評価した前向き研究を行っています。64名の妊婦(切迫早産47名、その他疾患17名)を対象に16S rRNAシーケンス法で腟内細菌叢を分析しました。結果として、切迫早産群と非切迫早産群の間には細菌叢に差は見られませんでしたが、早産群と正期産群の間ではNugentスコア、ラクトバチルス種の割合、細菌種数、ウレアプラズマ種の陽性率に有意差を認めました。多変量解析の結果、腟内細菌叢におけるウレアプラズマ種の陽性は切迫早産女性の早産分娩の予測因子(OR 6.5)であることを示しています。

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文責:川井清考(院長)

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