2型糖尿病妊婦における妊娠転帰(Am J Obstet Gynecol. 2025)

【はじめに】

早発性2型糖尿病(一般的に40歳以前に診断されるもの)はその有病率が急速に増加しており、疾患に伴う炎症・高アンドロゲン状態が、重度な代謝表現型と一致して、周産期予後を悪化させると考えられています。
2型糖尿病妊娠、1型糖尿病妊娠、妊娠糖尿病妊娠、非糖尿病妊娠での妊娠転機を報告したシステマティックレビュー・メタアナリシスをご紹介いたします。

【ポイント】

2型糖尿病妊娠は、1型糖尿病妊娠、妊娠糖尿病妊娠、非糖尿病妊娠より高い周産期合併症と関連しています。

【引用文献】

Naomi S Clement, et al. Am J Obstet Gynecol. 2025 Apr;232(4):354-366. doi: 10.1016/j.ajog.2024.11.026.

【論文内容】

2型糖尿病を1型糖尿病、妊娠糖尿病、非糖尿病妊娠と比較して、その妊娠転帰への影響を明らかにすることを目的としたシステマティックレビュー・メタアナリシスです。PubMedを2009年1月1日から2024年まで検索しました。10例以上の2型糖尿病妊娠における主要評価項目のうち少なくとも1つについての原データを報告している観察コホート研究が対象となりました。比較対象として糖尿病および非糖尿病妊娠のデータも収集しました。主要評価項目には先天性異常、死産、新生児および周産期死亡率、出生体重、在胎週数に対して大きい児(LGA)、在胎週数に対して小さい児(SGA)、巨大児の割合が含まれました。
結果:
47研究が分析されました。各分析における妊娠数は、分析される評価項目によって異なりましたが、723から4,469,053の範囲となりました。
1型糖尿病妊娠と比較して、2型糖尿病妊娠はSGA児のリスクが高く、新生児および周産期死亡率も高いことが示されました(それぞれOR 2.29、95% CI 1.12-4.67;OR 1.53 95% CI 1.20-1.94;OR 1.31 95% CI 1.07-1.61)。
妊娠糖尿病と比較すると、2型糖尿病妊娠は先天性異常(OR 1.91、95% CI 1.04-3.50)、LGA(OR 3.49、95% CI 2.49-4.89)、新生児死亡率(OR 3.96、95% CI 3.38-4.64)、および死産(OR 16.55、95% CI 5.69-48.11)のリスクが高いことが明らかになりました。
非糖尿病妊娠と比較すると、2型糖尿病妊娠は先天性異常(OR 1.76、95% CI 1.11-2.79)、LGA(OR 2.79、95% CI 1.93-4.04)、周産期死亡率(OR 4.18、95% CI 2.91-6.01)、および死産(OR 7.27、95% CI 3.01-17.53)のリスクが高いことが示されました。

【私見】

2型糖尿病妊婦は慢性高血圧症の割合が高く(2型糖尿病: 17.1% vs 1型糖尿病: 7.6%、妊娠糖尿病: 2.7%、非糖尿病: 0.7%)、これが胎盤機能と胎児発育に影響している可能性があります。また、BMIも2型糖尿病妊婦でより高く(2型糖尿病: 32.4 vs 1型糖尿病: 26.1、妊娠糖尿病: 30.7、非糖尿病 26.2)、周産期予後を悪化させている可能性もあります。
早期の妊娠計画により、血糖値の最適化、葉酸補給、血圧管理、BMI管理、糖尿病関連合併症の管理、禁煙、潜在的な催奇形性薬物の中止が可能になります。

#2型糖尿病
#周産期死亡率
#妊娠転帰
#先天異常
#亀田IVFクリニック幕張

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

亀田IVFクリニック幕張