早発閉経(POI)女性のホルモン補充療法中における卵胞発育(Reprod Med Biol. 2021)

【はじめに】

早発閉経(POI)は原始卵胞の早期枯渇を意味し、40歳未満の女性、4ヶ月以上の無月経、閉経レベルの卵胞刺激ホルモン(FSH)値を示す患者を指します。発生率は30歳未満の女性で0.1%、40歳未満の女性で1%程度とされています。
排卵しなければ妊娠に至ることができないわけですが、女性は閉経時でも卵巣には少なくとも1,000個の原始卵胞が残っているとされており、POI患者でも稀の排卵時に逃さず不妊治療を行うことで妊娠に至ることがあるとされています。
では、POI患者はどの程度排卵を期待していてもいいのでしょうか。

【ポイント】

POI患者におけるホルモン補充をしながら経過観察をしたとしても、無卵胞発育期間が長くなるほど、その後の卵胞発育しない割合が高くなります。

【引用文献】

Takuma Sato, et al. Reprod Med Biol. 2021 Mar 19;20(2):234-240. doi: 10.1002/rmb2.12375.

【論文内容】

早発閉経(POI)による不妊患者におけるホルモン補充療法中の経過観察期間と卵胞発育の関係について情報を提供することを目的とした後ろ向きコホート研究です。
2014年4月から2019年2月まで実施され、週1回の卵胞発育追跡を行った20名のPOI患者を対象としました。年齢、FSH値、AMHレベル、最終自然月経からHRT開始までの期間、HRT中の経過観察期間などの背景特性が調査されました。無卵胞発育期間が集計され、その後の累積卵胞発育検出率が計算されました。
HRTのプロトコールは、ジュリナ錠®0.5mg 毎日またはエストラーナテープ®0.72mg 2日ごと、またはプレマリン錠®0.625mg 毎日を消退出血期間中も継続投与、1ヶ月以上卵胞発育ない場合はプラノバール®を10日間投与とし、卵胞発育が確認された後は、ゴナドトロピン製剤およびGnRHアンタゴニストを用いて卵巣刺激を行っています。
結果:
卵胞発育群11名(55%)と非卵胞発育群9名(45%)でした。少なくとも1年間の経過観察で、累積卵胞発育率は70%でした;卵胞発育は経過観察期間の3ヶ月で49.1%、その後3-6ヶ月で33.4%が排卵、その後6-12ヶ月で8.3%が排卵に至っています。

【私見】

Bidetらの報告(Bidet M, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2011)では、358名のPOI患者の長期フォローアップで、卵胞発育の88%が最初の1年以内に発生し、妊娠率は4.4%であったとしています。本研究も同様の傾向を示しており、卵胞発育までの時間に関して類似したパターンが見られます。
佐藤先生と話した際、妊活は厳しいようだが妊活終了も踏まえて患者様には情報提供をすべきであり、そのためにまとめた報告と言っていました。プレコンセプション含めた妊活開始前介入は本当に重要だと思います。

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文責:川井清考(院長)

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