調節卵巣刺激における早発LHサージ予測因子(Gynecol Endocrinol. 2024)
【はじめに】
卵巣刺激時の早発LHサージは早発排卵の原因、早期黄体化の原因となります。
LHサプレッションにはアゴニスト使用、アンタゴニスト使用、プロゲスチン使用が一般的ですが、GnRHアンタゴニスト法を用いた際の早発LHサージのリスク因子を調査した報告をご紹介いたします。
【ポイント】
患者年齢、BMI、刺激開始時LH値、アンタゴニスト投与日LH値、総刺激日数が早発LHサージの予測因子となります。
【引用文献】
Maya Nasatzky, et al. Gynecol Endocrinol. 2024 Dec;40(1):2365913. doi: 10.1080/09513590.2024.2365913.
【論文内容】
早発LH上昇を予測する臨床パラメータとその相対的寄与度を明らかにすることを目的としました。イスラエルのラムバム医療センターで生殖補助医療(GnRHアンタゴニストフレキシブル法)を実施した382名の患者を対象としたレトロスペクティブ研究です。患者は年齢別に層別化され、臨床・人口統計学的パラメータに基づいて早発LH上昇を予測するモデルが、重回帰分析と機械学習アルゴリズムの両方を用いて開発されました。
結果:
早発LHサージは「排卵トリガー前のLH値が10 IU/L以上で、かつ刺激開始時LH値と比較して1.5倍以上の上昇」と定義されています。382名のうち15名(3.9%)がこの基準に該当するLHサージを経験しました。早発LH群では、トリガー時LH値が平均17.1±6.6 IU/L、早発LHサージなし群では2.9±2.5 IU/Lでした。
LH上昇を有意に予測した臨床パラメータは、患者の年齢、BMI、刺激開始時のLHレベル、アンタゴニスト投与日のLHレベル、および総刺激日数でした。重要なことに、特定の年齢グループのデータを分析すると、若年患者(25~30歳、R² = 0.88、p<.001)でモデルの予測が最も強く、高齢患者(>41歳、R² = 0.23、p=.003)で最も弱いことがわかりました。
・総刺激日数
平均日数は9.5日前後
19-24歳/25-30歳のグループでは、刺激日数の係数が負(-0.1と-0.2)で、刺激日数が長いほどLH上昇リスクが低下、31-35歳のグループでは、係数が正(0.5)で、刺激日数が長いほどLH上昇リスクが上昇、36-40歳のグループでは、係数が正(0.1)だが影響は小さい
・BMI
平均BMIは24.97±5.1 kg/m²
全患者群ではBMIの増加がLH上昇の予測に寄与していそうだが、症例数が少なく傾向が弱く出ている可能性を記載しています。さらに、high BMI患者は通常LHサージをまったく示さない傾向があることもわかっています。
意外と評価が難しいですね。
・事前のLHレベル
刺激開始時のLHレベル→ 高いほどLH上昇が小さくなる(係数が負)
アンタゴニスト投与日のLHレベル→ 高いほどLH上昇が大きくなる(係数が正)
・年齢因子
トリガー前LH値平均値も早発LHサージ発症率も高齢の方が高い
【私見】
今回の検討では、症例数が少ないため 結論が年齢によりばらついた傾向があります。ただし、どのような症例でサージがでやすいか認識しておくことは重要なポイントだと考えます。やはり、刺激日数を増やすこと、年齢が高いことはアンタゴニスト投与下での早発LHサージにリスク因子というのは臨床感覚とも一致する見解です。
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文責:川井清考(院長)
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