複数胚移植による単胎妊娠でのhCG値上昇率(J Assist Reprod Genet. 2018)

【はじめに】

複数胚移植を実施したときの早期妊娠判定の血清hCGの説明の仕方は難しいです。
2個胚移植の場合は①1個着床、②2個着床で変わってきますし、2個着床したとしても2個が別々の生化学的妊娠、流産、妊娠継続などのパターンをたどりますから、あくまで早期妊娠判定の血清hCGは2個胚移植の総和であって、それ以上の判断は難しいと伝えています。今回、複数胚移植で単胎分娩となった症例と単一胚移植で単胎分娩となった症例のhCG上昇率を調査した報告をご紹介いたします。

【ポイント】

複数胚移植後の単胎妊娠では、単一胚移植と比較して初期hCG値の上昇不良が多く、これは非生存胚の一過性着床の可能性が考えられます。

【引用文献】

Brady PC, et al. J Assist Reprod Genet. 2018. doi: 10.1007/s10815-017-1102-4

【論文内容】

複数胚移植(2個以上)後の単胎妊娠(胎嚢が1つしか見えない症例に限る)において、単一胚移植と比較してhCG値上昇率がどのように変化するか調査することも目的としました。
2007年から2014年に、新鮮胚または凍結胚を用いたART周期で、Day3またはDay5胚移植を実施し、超音波検査で単一の胎嚢を確認し、妊娠24週以降まで生児を得た症例を対象としました。「2日間でのhCG上昇が66%未満」を異常上昇と定義しました。
結果:
複数胚移植患者の6.1%(84名)が第1回目と第2回目のhCG測定値の間で異常な上昇を示し、これに対して単一胚移植患者では2.7%(n=17)でした(OR 2.16, 95% CI 1.26-3.71)。
全症例の54%で3回目の測定が実施しており、89%は1-2回目で異常上昇を示した症例でした。1-2回目で異常上昇を示した症例のうち、77%は2-3回目測定では正常上昇を示しました。2-3回目での異常上昇は全体の3.6%のみで単一胚移植群(2.6%)も複数胚移植群(4.3%)も差はありませんでした。(OR 1.60, 95% CI 0.79-3.28)

【私見】

複数胚移植の早期判断として面白い知見だと思います。
妊娠診断から48時間でhCG上昇率が緩慢な症例に関しては、再度48時間後の判断が有用であることが示唆されています。

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文責:川井清考(院長)

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