卵管因子不妊を疑うリスク因子(当院報告:J. Clin. Med. 2025)

卵管因子不妊は女性不妊の主要な原因の1つで、有病率は11%~30%とされています。クラミジアや淋菌などの性感染症、骨盤内手術歴、腹膜炎、子宮内膜症などが原因となります。しかし、骨盤内炎症や生殖器系疾患の既往がないからといって、卵管の状態が正常とは限りません。そのため、不妊治療の基本検査として卵管疎通性検査が広く行われています。今回、我々の施設での卵管性不妊リスクを調査しました。

【ポイント】

排便痛、クラミジアIgG陽性、子宮内膜症、子宮筋腫(粘膜下)を有する不妊患者では、卵管疎通性に異常がある割合が増加しました。

【引用文献】

Nako Y, et al. J. Clin. Med. 2025, 14, 179. doi:10.3390/jcm14010179

【論文内容】

2016年5月から2023年8月までに、不妊を主訴に来院しHSG検査を受けた3,322名の生殖年齢女性を対象としました。
結果:
HSGでは2,764名が卵管疎通性あり、558名(16.8%)が非疎通性でした。非疎通性のうち、片側377名(11.3%)、両側181名(5.4%)でした。卵管狭窄は右側148名(4.5%)、左側153名(4.6%)でした。卵管閉塞は右側181名(5.4%)、左側159名(5.4%)でした。卵管留水症は右側37名(1.2%)、左側58名(1.7%)で認められました。多変量解析により、クラミジアIgG陽性(OR 1.57)、子宮内膜症(OR 1.64)、子宮筋腫(OR 1.58)が卵管非疎通性の独立した危険因子として同定されました。クラミジアIgG陽性(OR:1.92)と子宮筋腫(OR:1.88)は閉塞の危険因子であり、排便痛(OR:2.79)、クラミジアIgA陽性(OR:2.09)、クラミジアIgG陽性(OR:2.07)、子宮内膜症(OR:3.11)は、卵管留水症の危険因子となりました。

【私見】

HSGは比較的安価な検査ですが、85%の女性が検査中に痛みを感じます。また、今回の論文投稿で感じたのは、日本では放射線被曝の可能性もあるのに全例HSGをルーチンでやるのか???みたいなコメントが多くあったことです。放射線被曝といっても、胎児への影響は皆無な時期ではありますが、ルーチンでHSGという考えは一度とっぱらって、まずは自己妊活、そのうえで適宜HSGを追加していく、またHSGより超音波ガイド下卵管疎通性検査に移行していくのが海外のトレンドなのかと感じています。

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文責:川井清考(院長)

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