男性不妊への影響:ライフスタイル(携帯電話、ノートパソコン、Wi-Fi の使用)

携帯電話、ノートパソコン、Wi-Fi の使用(主に電磁波)が細胞破壊やホルモン変化など様々な要因から人体に影響を及ぼすという論文は2000年から2008年くらいまで大量にでています。男性不妊への影響に関しても様々な論文がみられ、電磁波の直接的な影響や陰嚢温度上昇(ノートパソコンを膝の上において操作するなど)による二次的な精子のパラメータに及ぼす悪影響などが、動物、細胞を用いた試験管内実験、少数の男性を対象とした研究が行われています。

「関係ないんじゃないの?」という懐疑的な意見を持っている人も勿論います。例えば、携帯電話の周波数は0.9-2.45GHzで、これは非電離放射線と考えられており、電離放射線とは異なりDNAに直接影響を及ぼすことはありません。携帯電話に関する懸念の生物学的根拠は酸化ストレスを増大などの仮説はありますが、明確な根拠はありません。携帯電話を1 日 18 時間暴露されたネズミに与える影響(生産能力が減った)は関係してそうですが、携帯電話をズボンのポケットに入れていたらこの論文の同様の結果になると思うかどうかです。
ノートパソコンの使用に関する研究はほとんど行われていませんので、どこまで出ている論文を評価するかどうかは難しいところだと思います。
どの論文も精子のパラメータまでで妊娠結果までは示せていない短期的な検証がほとんどで電磁波の長期的な悪影響を今後検討する必要がありそうです。ただ、精液所見が悪いのであれば少しこのような報告があることを意識してもいいのかもしれません。

参考文献:

[電磁波が悪くするかも?]という論文
Agarwal Aら. Fertil Steril 2008
Avendano Cら. Fertil Steril 2012
Mortazavi Sら. J Hum Re- prod Sci 2013
Gorpinchenko Iら. Cent European J Urol 2014
Yildirim MEら. Kaohsiung J Med Sci 2015
Mortazavi SAら. J Biomed Phys Eng 2016
Kamali Kら. Urologia 2017
Oh JJら. J Integr Nephrol Androl 2018
El-Hamd MAら. J Integr Nephrol Androl 2018
Jaffar FHら. Tohoku J Exp Med 2019

参考文献

Should empiric therapies be used for male factor infertility?
Kai J. Buhlingら. Fertil Steril 2020

文責:川井(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。